ところが、父親の影が見えてこない家族が、少なくはない。
 息子の学年が何となく落ち着かなく、クラスメイトが嫌な目に遭っているのを見て傷つくという息子の気持ちを知って、改めて色々と本を開けてみたり、ネットでカウンセラーの手記を読んだりして、そこで改めて感じたのは、父親と息子の関係の大切さであった。
 男の子は、父親が自分の方を向いていないということを感じている時、ストレスが相当なものだそうだ。母親がいくら必死になっても、一生懸命やっても、それはカバーしきれないものらしい。父親がいるのに息子にかまってやらない、という家庭であるなら、父親のいない家庭の方が、息子にとってはストレス少なく、健全になるものだと書いてある。そのくらい、息子というのは、目の前の父親が自分に感心があるかどうかが大事らしい。
 それを読んで、ああそうかもしれないなと、納得した。
 息子の学年が落ち着かないと知った時、一番中心になってクラスを荒らしたがっている子のことが取り沙汰された。そこのお母さんが学校に何度も来たり、泣いたり、その子に寄り添ったり、色々と頑張っておられると、学校の先生から話を聞いたが、父親の話が一向に出てこない。いないのかも、と思ったくらいだ。周りに聞いても「いる」ということはわかったが、とにかくほとんど情報がない。何人もの中に、数人、「一度見たかな」くらいだ。挨拶したこともないし、これだけ取沙汰されているのに、まったくもってノーリアクトなのである。もちろん学校にも来ない。先生に会いにも来ない。
 その子と行動を共にしている男の子たちがいるのだが、そのお父さんたちも、これまた非常に存在が薄い。何かあれば、お母さんやおばあさんなど、顔を出したり、困っていたりと、動きは感じられるのだが、父親には何も伝わっていないのでは?と思うくらい、影が薄い。
 そう言えば、私の夫は、テレビで犯罪のニュースを見聞きした時「父親の影が薄いね」と、発言することが少なくない。それは自分が父親の立場で、色々思うところがあるのだろう。全部がそういうケースではないのだが、確かにうなずけることがある。
 以前も書いたことがあるが、ある犯罪者の家庭では、子供の頃、その母親が虐待を繰り返していた。父親は、傍観していたらしい。事件後、「こういう環境で育った子が皆同じように育つとは限らない。だから、子供に責任があり、家庭のせいとは思えない」といった趣旨のことを言った。確かにその犯罪者は大人であったが、その言葉を読んだ時に「ああ、こんなことを言う父親だからなんだ」と思った。度々書くが、「こういう環境で育ったらこういう子になる」とは限らない。ただ、それは、その子供の個性によるものであるから、親が気を付けて接しないと、取り返しのつかないことになりますよ、子供の個性によっては、その子の人生、無茶苦茶にしますよ、と言いたい。それは、その子の責任だけではなく、人の心としてのメカニズムだから、親は大事に思って下さい、ということなのだ。
 まあそんなエラソーなことを書いている私も、自分の息子がどう育つかはまったく自信ないんですけどね……。とにかく、机上の空論であることを承知の上で書いているが、私の頭の中ではそういう風に分析されている。