食べられない物が徐々に出てきたのに、別に体重がすごく減るとかいうことはない。
 学生時代よりは、確かに体重はわずか減ったけれど、体型は学生時代の方が引き締まっていた。大学生の、運動をさほどしていなかった時期も、体重こそ気にしていたものの、体型はそんなに気にするようなものではなかった。
 今は、当時より体重が数キロ減っても、お尻の肉はふにゃふにゃになり、重力に勝てずに長く下にさがってきている。太ももの肉も、セルライトでぼこぼこな上、太ももの肉が膝にたまって、膝に影ができている。
 あーあ、こんなに食べられなくなったのに、こんなにぶよぶよしちゃってもー。
 ウエストはくびれが減ってしまったが、さほどお腹は出ていない。なのに、何故お尻と太ももだけ、こんなにも肉がたまり、老化が著しいのだろう。運動か……。しなきゃなー。
 まあ体型の話はともかく、食べられる物が減ってきていることは、残念である。好きな物が受け付けられないのは悲しい。あーあ、美味しそうだなあ、でも食べられないなあ、という切なさ。とは言え、そういった思いはあっても、基本的に好き嫌い少なく、美味しく食べられる。
 ここのレストラン、すっごく美味しいね!という自分の感覚はあるし、美味しいと感じる感覚を大事にはしているが、まあまあ美味しくても、まあまあ満足している。それで胃もたれしなければ、良いレストラン、と勝手に思っている。味に関して、絶対的な自信があるわけではなくて、私の美味しいと感じる物が、確かな良い物、というわけでもない。又、とっても良い素材で、一流の料理人が作った物を、「やっぱりね」と自信を持って、美味しく食べられるわけでもないと思っている。好みもあるしね。
 さかのぼれば、物心ついた時、アメリカで食生活を送っていたわけで、結構ジャンクな物が平気なのである。むしろ、ジャンクな物が好きである。脂臭いホットドッグとか、油でぺなぺなに張りもなくなっちゃったピザとか、大好物。他に、焼きそばとか、お好み焼きとか、カレーとか、パスタとか、味が濃くてあぶらっこい物はいまだに本当は好き。
 日本に帰国した時には,たくさんの食べ物が克服できて、給食もとても美味しく感じたくらい、当時のアメリカの物はあまり美味しくなかった。
 だから、食べ物の好き嫌いは、子供のころは多かったものの、少しずつ克服していったし、贅沢は言わないようにしている。出された物は、少々不満があっても、よっぽどお腹がいっぱいでない限り、文句言わず、ちゃんと食べます。
 とは言え、過去に、どうだかな、と思った食事があった。
 旅館に泊まった時の夕食に出された物があまりに貧相で。せっかく一泊、自分で作らないで済む夕食なのだから、美味しい物を、と楽しみにしていたので、ちょっと残念な気持ちで朝食を迎えると、ますますひどかった。家以外で食べる天ぷらなのに、冷えていて何かしっとりしている。あれは、記憶に残る天ぷらであった。
 後で胸やけして「ああ、あんまり油が良くないんだな」っていう天ぷらはあるが、食べる瞬間から、残念な気持ちになる天ぷらは、なかなか経験のないことである。