当時の小学5年生の男子は……。
 以前ここに書いたことあったっけな。
 授業中にいきなり、「先生、ウンチとウンコ、どっちが良いと思う?」と聞いてきた無邪気な子がいた。
 厳しいことで知られているその先生は、それを聞いてお腹を抱えて笑っていた。「アンタはどっちが良いと思うん?」と聞かれ、その子は、ウンチとウンコの言葉のニュアンスの違いについて、真剣な表情で力説していた。
 その先生であったということも理由の一つだが、勉強だけできる子、というのが、その先生は嫌いだった。成績だけが良い子を、よく口撃していて、その子は、よく卑屈な表情を浮かべていた。字が汚い子のことも、ペシャンコになるほど口撃し、大人しいその子はうつむいていて、私はかわいそうに思った。
 爪かみの激しく、話すと理屈っぽい子がいて、私は特別に嫌いでもなかったのだが、先生はその神経質な感じがいやなようで、度々、嫌味をその子に向けていた。その子はますます爪をかんで卑屈な表情を浮かべていた。それもまたかわいそうに思った。
 授業中、ボールペンのキャップのひっかける部分に、定規を横向きにさして、飛行機に見立てて夢中になって遊んでいた子を、先生が注意した。でも、その子はしばらく気付かずにそのボールペンが飛行機だという体で遊び、周りの子がクスクス笑いだすと、ハッとしてキョロキョロ周りを見回し、赤くなってうつむいた。その子も私のことが好きだったらしく、でも、それを知っても、やっぱり私の気持ちは微動だにしなかった。私は当時、特に好きな男の子はいなかったんじゃないかな。でも、男の子って可愛いなって思う場面は、幼い頃からずっと引き続き、多くあった。
 4年生いっぱいまで、好きな男の子はいっぱいいた。6年生になると、特定の子が好きになった。でも、5年生って、特に誰がどうのってなかったなあ。あの頃が、「好きな男の子って、そうたくさんいるものではない」と気付き始めた頃だったのかな。そうやって意識したわけではないけれど、色々な男の子が可愛い、って思っていた時期から、男の子って可愛いところがある、でも、好きな子は一人で良いっていう、そういう面が大人に変わる時期だったのかも。
 男の子たちはどうだったのだろう。好きな子なんて、男の子にとって、本当は、そうそういないのでは?と、息子たちを見ていて思う。きっと、私のことが好きだと言っていた男の子たちも、なんかよくわからないけど聞かれて答えなきゃいけない状況だったから、そう言った、なんとなく同じ班だからとか、隣になったからとか、そんな程度のものだったんじゃないかなと思う。その辺りは、今の時代も昔の時代も変わらず、無邪気なもんなんじゃないだろうか。