思いのほか、息子の話が長くなってしまったが、私は、幼い頃から好き嫌いの多い子だった。
 野菜の多くが駄目であった。ただ、子供が嫌う定番の「しいたけ」「にんじん」「ピーマン」「ナス」は平気だった。むしろ好きな方であった。ホウレンソウも、アニメ『ポパイ』のお陰で抵抗なく食べていた。よく、鏡の前で、力こぶを出そうと頑張っていた。女の子なのに、何故オリーブでなく、ポパイを目指そうとしていたのか、私。
 特に嫌いだったのは、歯ごたえの悪い野菜であった。歯にキシキシと当たると、耳までキンキンしてくる。
 「耳に響く!」
 これは、私の野菜嫌いの重要なポイントであった。
 レタスもキャベツも、セロリも玉ねぎも、噛むと耳障りな音がして、嫌いだった。
 そして、歯触りと関係ない、トマトも嫌いだった。匂いと、中のドロっとした感じ。あれを食べると、オエっと、よくえづいていた。なので、トマトと玉ねぎのサラダなんて出されると地獄であった。レタスにセロリが混じったサラダももう、ひっくり返りそうなくらい苦手であった。匂いもダメで、やっぱり吐きそうになった。フキとか、ネギとか、そういう筋ばった物は全部ダメであった。うまく噛みきれず、耳障りだし、うまくのみこめなかった。のみこめない間は、ずっとその匂いが口いっぱいに広がって、吐きそうになる。
 そういえば、何故か大根の煮物が嫌いだった。あれも何故だかよくわからないが、匂いが口いっぱいに広がると、えづいてしまうのだった。
 少しずつ少しずつ、克服していった。
 今では大根の煮ものも好きになったし、ネギ類なんか生でも大量にかけたい。セロリもフキもトマトも、めちゃくちゃ好きではないが、まあ大丈夫だ。玉ねぎの火の通った物なんかも大好きになっている。生のサラダは、全般に好きである。昔、酸味の好きな私が何故か苦手だったドレッシングも大好きだ。
 そうやって中学生の食べ盛りでは、相当な食いしん坊になり、20歳の頃、気が付いたら、ほとんどの物が大丈夫であった。
 大学生の頃は、グルメ本が出てきて、流行りはじめ、友達と調べては、あそこ行ってみよう、ここ行ってみよう、とバイト代から外食費を捻出し、時にはそうやってランチを楽しみに行くことがあった。
 そんな中、どうしても克服できないのが、果物の柿、生玉ねぎ、らっきょう、いちじく、で、ほとんど食べることができない。いまだにどれも、オエッと、えづいてしまう。
 あとは、南国特有の物がどうやら少々苦手のようで、ココナッツ味の強い物を食べて、吐いたことがあり、吐いただけなら嫌いにはならないのだが、どうもその後に残った匂いが苦手で、食べられなくなっていった。果物も、グアバとか、パパイヤとかマンゴーとか、どれも生臭く感じてあまり好きではない。
 でも、こういった物は、日常生活でほとんど出てこない物なので、不自由しない。