帰国子女のことに関して、私は自分で消化したと思ってきた。
 物心ついた時とは言え、3〜7歳頃までのたった一度の期間である。大人になってからそこに行くと、雰囲気も違ったり、また印象も違ったりするので、大人になってから外国に行くのは全然違う。そこで住んでもまた違う。
 子供の時にそこに住んでみるというのは、自分の中の文化がはっきりしていない所へ身につくから、もう少し自然に、無意識に入ってくる物事が多い。
 だから、日本に帰国してみて、初めて意識的になるのだ。ああ、日本ではこういうところがこうなのか、こういう場面ではこんな風に振る舞うのか。今まではこうだったのか、ああだったのか。
 時にそういった発見は、恐怖とも感じられる。
 でも、口に出すと大げさだとか、いばっているとか、自慢しているとか、被害妄想だとか、色々言われるので、最初の方に口に出してみるだけで、あとは押し黙って我慢する。感じたことを口に出すことすら許されないので。
 あらゆる感情を超えて、大人になり、ああ、あれはあれで良かったんだと思えるようになる。
 ところが。
 子供ができて、要らぬ葛藤なのか、必要な葛藤なのかわからないが、様々な思いがよみがえって苦しむことが増えた。
 それは、子供を育てていること、プラス、学校のことなのである。
 やっと小学生らしくなり、もうすぐ卒業という頃になって、抑えてきた気持ちが耐えがたくなってきている。
 私の場合、色々な苦しみを「帰国子女だから」と言い訳することで自分の感情をコントロールし、抑えてきたから、そういう風に思うのかもしれない。ずっと日本で文化を身につけてきた人の中でも、同じような葛藤を抱えている人が多いと、最近わかった。それは、私の先入観を変えると共に、それだけが理由ではないという、自分の独りよがりなところがわかり、新しい発見にハッとするやら安心するやらであった。
 でも、私はそうやって言い訳してきたから、今になってそのツケが回ってきたのか、この思いをどうにかしたいという気持ちが強くなってきてしまった。