夜中も痛みで何度も起き、朝起きると吐き気がした。ああやっぱりこんな症状、虫垂炎に違いない!!40過ぎて盲腸とか、あり得るのか……。いや、でも、さまぁ〜ずの大竹だって、40半ばだ。なる人はなるんだ、きっと。
 ……とりあえず、入院に備えて、読む本を積み重ねた。あれもこれも読んでいなかったから、病室では、こういうのを読んで気を紛らわそう。下着やパジャマは??まあ入院が決まってから準備しよう。
 私は深刻な顔で、夫に「虫垂炎かもしれない。とりあえず、かかりつけの内科に行けばいいんだって。」と言って心配をかけ、夫も少し緊張感のある雰囲気で、「いざとなれば、仕事を早く終えるから、すぐに連絡して」と言って、私は病院に向かった。
 いつもの内科だと、私のとても少ない白血球のことを知っているので、血液検査しても、「なにこの白血球の数、少ないじゃないですか!」とか驚かれず、すぐにわかってくれるだろう。
 診察室で、症状を訴えるとやっぱり「うーん、虫垂炎かもしれないねえ?」とか言いながら「まあレントゲン撮ってみましょう」と言った。
 レントゲン室では、板にしがみつき、後ろから写真を撮る、という仕組みになっている。
 その構造は、チラリと見ただけで、どういう物か、常識的にわかるのに、何故か私は、心配で頭がいっぱいだったためか、そのしがみつく板を見た時に「これで念写みたいに写すのだ」と、一瞬頭をかすめてしまった。
 そんなはずがないのに。
 あっそうか、後ろから撮るのか。固定というか、動かないため、左右対称かどうかがわかるようにするために、板にしがみつくようにして、後ろから撮る。と理解したのに、板にしがみついた瞬間、「この板で写す」と思い込んでしまったらしい。看護師さんに「痛い右側がよくうつるようにね(姿勢を良くしていてね)」と言われたら、もう「そう、ここ、よく写して下さい!!」と言わんばかりに、板にギューッと右側を押し付けてしまった。
 意味がわかんない。
 客観的に自分を見たら、大笑いしているところなのだが、何故か私は、ただまっすぐに撮りたい、動かないように、というためだけの板に、自分の痛いところを押し付けた。
 そして、出来上がった写真を見て、先生が「うーーん??何で背骨が左側に曲がっているのかな。すごく曲がってる。普通、痛い方に曲がるんだけどなあ」と言って笑っている。「本当に痛いの?」って。私はその時はほとんど無意識の動作だったので、「何ででしょうねえ?姿勢が悪いのかな。どうしちゃったのかしら」と一緒になって笑った。
 自分の訳のわからない理由については、夜になって思い出した。ああそうか、ああいうことが頭をかすめたな、と。