父は、とにかく「見守る」姿勢、娘に対しての信頼感、が強かったように思う。
 いや、もしかしたら、なす術を知らなかっただけかもしれないけど(笑)。
 でも、私は父に信頼されていると受け取っていた。だから、平気で父にひどい態度を取ったり、嫌な表情をしたりした。今でも平気だ。決して媚びたり、無理やり父親に好かれようとしたことはない。それでも、父が私を嫌いになることはないと自信があった。
 これが、おそらく、異性に対しての自信を持てるもとだったのではないかと思う。
 私は、幼い頃から、女子校に入るまで、女の子より、男の子と喋る方がラクだったのだが、その中で私はだいたいにおいて、強気であった。男の子には、平気でズケズケと物を言って、喧嘩になっても言い返して、だいたい、言い負けてくれる形を男の子の側が取ってくれていた。これは、父親のおかげだと私は今でも思っている。
 また、異性の親との関係が良好であれば、恋愛や結婚をする時に、穏やかで良い関係を保てるという気がしている。もちろん、親同士の関係も良好でなければならない。子供は、親の夫婦の‘関係性’を見て育つので。私が、夫を、母と似ている所があるなあと思うところがあっても(笑)良い関係を保てるのは、父のお陰であると思っている。不思議なもので。
 だから、そういう点において、父にも母にも感謝している。
 なんだこの両親に対する感謝、的な文章は。
 いや、私は家庭の中での、父親の役割の大切さについて、改めて主張したいのである。お母さんの存在は、娘にとっても息子にとっても大きい。一番世話をしてくれる対象である。身の回りのことから、様々に安心感を与えてくれる。母親は、少しずつ母性も育っていくし、子供はその母性を追い求める。子供がお母さんを好きなのは、人としての大前提であると思っている。でも、父親はどうなの、ってなった時。色々な家庭だとか心理学系だのといったそういう本を読みながら、漠然と、成長する息子には父親が大事だと思っていた。そして、娘の恋愛や結婚は、父親との関係が大きく左右すると思っていた。父親がいない場合は、それに代わる父性にはとても大きな意義がある。
 父親は、息子が仲間と思える相手、そして追い付け追い越せと、自分の生きる支えになる相手である。娘にとっては、女の子である自分の色々な面を許容してくれる器の大きさ。
 だから、父親は大事なのだと思う。
 最近、市の広報紙で、ある会が「家庭教育・健康安全」について話し合ったという記事が載っているのを読んだ。色々良い話し合いが行われたと見られる。ほとんどが、そうそう、知っている、その通りなのだよ、と思う親子関係、人間関係が書いてあったのだが、一つ、目を引く文章があった。
 「父親の登場は、百人のカウンセラーにも勝る」
 という言葉であった。私は、自分の父親で、又、夫と息子の関係を見て、それを感じる。
 見守っているよ、という父の態度。助けを呼べば助けに行ってあげるよ、という夫の言葉。どこでどんな風に手を差し伸べるかでも、違ってくる。何でもかんでも子供の思うようにしていてはいけないということだ。ハードルを作るのもまた父親の役目である。