雪虫を見たと言っては、札幌の人たちの心がざわざわし始めると、十日後くらいに、初雪が降る。それが十月。
 十一月になると、雪の日が少しずつ増えてくる。最初のうちは雨が多くて、それはそれでうっとうしい。
 雨は冷たいし、度々降られては天気が悪いことを実感する。そして、それが日によっては雪になったり。
 札幌の人はもしかしたら、この季節も秋と呼んでいるのかなあ。私にとっては、もう冬だけど。
 そして下旬には積もり始める。
 積もったり融けたりを繰り返し、やがて根雪になるのだ。
 「根雪」という言葉も、最初は馴染みがなかったが、すぐに当たり前に使うようになった。日中になっても、そこらの雪が融けずに、地面がずっと白いままの状態を言う。
 それは、歩道や空き地だけではなく、車の通るアスファルトにまで及ぶ。根雪になると、長い間、地面を直接見ることはできなくなる。ずーっと真っ白な地面しか見えていない。それはだいたい三月まで続くのだ。
 車のタイヤはだいたい十一月始めくらいまでに変えておく。面倒だったり、余裕がなかったりすると、業者に頼むが、北海道の人は男女性問わず、大抵の人がタイヤ交換できるのではないだろうか。休日に自分たちでせっせと変える人も多い。私はと言えば、教習所で習った気もするけど、関西じゃ、そんなタイヤ交換なんて、する機会もない。女子は特に興味ない。なので、札幌でタイヤ交換を当たり前にしている女性たちを見て、「おお、たくましい」と思った。そして、夫がやる気を出した時には、私も手伝うようにした。
 ワイパーも交換する。夏のままのワイパーでは、窓の雪がはらえずに、凍った雪をなすりつけている感じになって、ガラスが段々と氷でいっぱいになり、真っ白で見えなくなってしまう。とても危険なのだ。なので、必ずワイパーも変える。
 札幌は、やはり北海道の中でも大都市とは言え、広い。都会らしいデパートやお洒落な建物など、札幌駅周辺に集まってはいるが、郊外型の店も多い。どれも店舗面積を広く取ってあり、駐車場も広い。地下鉄やJRも通ってはいるものの、はりめぐらされているわけではないので、自然と車社会になる。道路もとても広い。細かな住宅街以外、二車線以上はほとんど当たり前だ。
 冬に車を運転するということを、私は早いうちにあきらめた。
 とにかくすべる。
 歩くのも滑るんだから、当然車もすべる。ゆっくり走っていても、ハンドルはあっという間に取られてしまう。ツルツルで、ガタガタだ。
 ガタガタ?? 札幌に住むまで、雪道がガタガタとは、まったく想像がついていなかった。雪道は、ツルツルか、ふかふかなものだと想像していた。
 何故ガタガタなのか。