今回の『シュガーラッシュ』という映画。
 息子、小学校5年生。さすがに、静かに、言葉も出さずに観ることができていた。私も内容が面白くて、早々と映画に入り込んだ。
 最初に出てきた悲しいシーンで、息子が目を拭いている。次にちょっとした意地悪をされているシーン、別の嬉しいシーンでも目を拭いている。あれ。泣いているのかな?そして、ベッドで一人で寝るという話になった時辺りから、息子のスイッチが入ったようで、すすり泣き始めた。
 それからはもうだめ。
 私もグッと来そうな、車を壊すシーンで、息子は嗚咽を漏らしだした。ああ気になる。
 隣りのカップルも気になる。きっとまだデートも何回目かって時に、あまりに無邪気な反応をする子供がそばにいると、なんだかなあって思っているに違いない。
 私も、きっと脚本書いた人の思うつぼで、色々とストーリーに騙されたりしていた。「ああそうだったんだ」と気付いたり、涙が出そうな場面は他にも多々あった。でも、そういう場面の度に、息子の嗚咽が横からもれてくる。そのうち声こそ出さないもののしゃくりあげたりしている。
 例えば、主人公に必要なのは、金のメダルなんかじゃない。……この子にもらった手作りクッキーのメダル、この子の気持ちで充分……なんてことを言いたかった場面だったんだろうなと思い返す。……もはやセリフは聞こえてこない。だって、主人公が「俺に必要なのは、金のメダルなんかじゃない。」と言った後、クッキーのメダルのアップ。そして「……この子」くらいで、息子が既に激しく嗚咽をもらしているのだ。もう「うう……。」とか聞こえていて、私が渡したハンカチで必死で涙を拭いている。ベタなセリフだけど、映像とセリフの間が良くて、涙をさそわれそうである。でも、涙をさそわれ……の辺で息子は号泣。そのうち私の腕に突っ伏してきたので、背中をさすってあげた。なんだこれ。
 さらに、女の子がその世界からはじき出されてしまい、「私は行けないの」と言う場面で、「ああ、どうしよう〜〜〜」とばかりに、アウアウ泣いている。「うう……。」また声が漏れている。気になる。もうめちゃくちゃ気になる。隣のカップルも絶対に気になっている。
 やっと最後の安心できるシーンになった時に「はあー……。」というため息と共に、息子が涙でグシャグシャになった私のハンカチを、ぽいと返してきた。
 ダメだ。
 感動しきれなかった。
 期待していなかったわけだから、感動「したかった」わけではない。でも、感動しそうな場面は幾つもあった。最初に書いたように、胸がいっぱいにもなった。でも、涙が出そうな場面になるとすぐ、隣から、食い気味に嗚咽が聞こえてくるんだもん。
 ここまで豊かに感情を表出されるとは、と夫も後から笑っていた。確かにそう育てた覚えはあるけど……。だけど!こんなにもか???
 今度は息子がいないところで、DVDでも良いから、しっかりと観よう。