『最強の二人』という、フランスの映画を観た。
 美容院で雑誌を読んでいる時に、そういう映画があるという記事を見つけた。夫に話したら、夫も、ツイッターで知っていたらしく、「観てみたい」と言った。
 そして、偶然にも良い機会があり、観ることができた。
 すごく良かった。
 映画というものは、批評をあれこれしたくなるし、良いと思う意見があれば、何かしら不満を感じると否定的な意見が出てくるのは仕方ないことで、あらゆる映画に、どちらの意見もあるのは仕方のないことである。
 でも、私はよほどでない限り、映画は単純に楽しみたい。せっかく観たのだから、観て良かったと思いたい、という気持ちもあるけど、なんだかんだ言う前に、終わった直後の印象を大事にしたいのだ。そういう意味では、夫も映画の楽しみ方を知っていると思う。
 終わった直後に、不満が残れば黙っているけど、色々細かいことは置いといて、とりあえず心に響くものがあれば「良かった!」「面白かった」と言う。色々思う人はいるだろうけど、私は率直にそうやって感情を出すのは良いと思う。映画を楽しむってそういうことだと思う。それは『ニューシネマパラダイス』でも、そう感じたことである。客は、様々なシーンに、ドキドキし、涙し、笑い転げ、あー良かった、で良いのではないかと。
 この映画を観終わった時にも、夫も私も「観て良かったね。」と言い合うことができた。
 深刻な問題をたくさん扱っているのに、笑える場面が多々あり、これが日常だと思わせられる。そして、ドリスとフィリップという二人の主人公のユーモアを楽しめる。時々乱暴で、ブラックなジョークも言っている二人なのに、何故か品の良さを感じられる。二人とも、自分を強く持っているからなのか、毅然と自分を通す二人が醸し出す雰囲気の映画にずっと品の良さを感じ続け、心地よかった。
 淡々と進む話、次々と静かに流れる場面に、大げさなものや、感動を押し付けるところは感じられない。わーっと泣く場面もない。ショッキングな映像、ドキドキする場面、ここで感動してねという場面、そういうことが一切ない。美化しているだけなのではという意見もあるらしい。でも、二人は実際に存在し、おそらく時には悪態をつきながらも、強いつながりを持って、信頼し合っていると思われる。それだけで素晴らしい。ドリスがフィリップに、たくさんのユーモアやジョークと、生きる喜びと、温かい心を与えてもらい、一旦離れるのだが、ドリスもまたいつの間にか教養を身につけて、他人との会話に広がりができているのも素晴らしいと思った。二人の関係がそこにも表れていた。
 観終わった後、なんとなく泣きたい気持ちになった。大きな規模の感動が、胸いっぱいに広がった。ああ、夫と観て良かった。そうでなければ、この良さを言葉では伝えきれないからだ。良かったよ、ああだったよ、こうだったよ、と場面の説明をしても、伝えきれないものがある。きっと説明しようにも、もどかし過ぎると思う。