私が最初に観た鉄拳のパラパラ漫画の作品は『振り子』である。他に心を動かされたのが、museのプロモーションビデオとして流れた『follow me』のだった。
 それは、まだ細胞にすら存在していない胎児が、未来の父親と母親を引き合わすという内容で、観た時に「子供がいる人なら感じたことのある気持ちだ」とまずそう思った。
 ただ、結婚しても子供がいないカップル、いなくても仲が良いまま続いているカップルも結構いる。私たちも、子供ができない老後を何度も何度も想像した。5年間できなかったので、色々と葛藤はあった。それとは別に、子供がいても、離婚するカップルもいる。
 なので、そういった人たちが、その作品を観ても、「そうかなあ」ってなると思う。そういう引き合わす力以上の、自分たちの気持ちや、合わないと離れる気持ちがあるんだもの。 すると、まあそこまですごく共感をおぼえるわけでもないかとも思う。が。やっぱり、今となっては結婚していて子供がいる身。
 自分の子供に苦労させられている、嫌な思いもいっぱい知ってしまったし、感情が激しく動く。それまでは抑えてきていた怒りや悲しみをいっぱい知ってしまった。その上での幸福感や充実感。愛おしい気持ち。私個人的には、心理学やカウンセリングの世界に足を踏み入れたこと。色々と知ったこと。知らなくて良かったかもしれない、でも知ったたくさんのこと。自分の感情でも知識でも、人の気持ちも。こんなにたくさんのことを教えてくれてありがとう、きっと、未熟過ぎる私たちに、本当にたくさんのことを教えてにきてくれたんだね、ミツ君。ダンナと私はよくそんな気持ちになる。
 だから、この作品もまた、胸を打った。
 でもやはり一番胸にグッと来るのは、『振り子』。私は『振り子』とか『follow me』の漫画みたいに、辛い人生を送っているわけではない。幸いダンナは穏やかだし、わかってくれなーい!と傷つけあうこともあるけど、基本的によくわかってくれると感じている。実際はどうあれ(笑)自分がそう感じているのだから、恵まれていると思う。なのに、何故こんなに、心を動かされるのか。それは、どんなに言葉を尽くしても伝わらない気持ち、言葉にならない気持ち、言葉にできない気持ちがこの漫画の中に溢れているということがあるのかもしれないと思う。それで人はスレ違ってしまう。仕方がないのだが、仕方ないな、人ってそういうものだよなと思えるまで、一度スレ違うと、かなり葛藤がある。でも、お互いを思う気持ちがちゃんとあれば、また元の気持ちに戻れる。
 さらに女の人の、男の人を想う気持ちがとてもよくわかったし、それに応えようとしつつ、ついそういう女性の気持ちに甘えてしまって、自分の感情のままをぶつけてしまう男性の気持ちが辛かった。それに耐えて、疲れ果ててあきらめて、悟りきっちゃったような女性。きっと彼女は幸せだろうが、私はこうはなりたくないと思ってしまう。自分の気持ちをもっと受け止めてもらいたい。その男の人が、色々なことに気付いた時にはもう遅い。
 「そうだ。時間は動き続けるんだ。戻れないし、止めることもできないんだ。相手をもっと大切にしなくちゃいけないな。」
 観る度に、しつこくしつこく、そう同じことを思う。