子供が四年生になり、宿泊研修というのか、学校からの合宿というのか、校外学習というのか、なんというのか、全国的に伝わる正式名称なのかわからないが、息子の学校では「自然教室」と呼ぶ、一泊での子供たちだけでの学校からの行事があった。ちなみに、私の4年生、当時宝塚市では「転地学習」と呼んだ。4年生は転地学習をするのだと。
 で、息子はそれをすごく楽しみにしていた。
 幼稚園の年長の時、幼稚園に一泊する大冒険があった。それはそれは心配で、先生方などスタッフが、こまめに写した写真をパソコンに載せてくれて、親が見れるようにしてくれた。私はこまめにチェックをし、夜もちゃんと寝れるか心配で、寝付いたものも写真で見届けてから安心して寝た。先生方の努力は深夜まで続き、12時頃、我が息子の寝付いた写真を見た覚えがある。迎えに行くと、緊張が解けたからか、ものすごく泣いた。皆、喜んで親と会っているのに、我が子だけ大泣きである。ある本によれば、「愛着障害」じゃないかと言われるのではないだろうか。私はその本を読んですごくショックを受けた。
 精神的虐待を、知らず知らずに息子に向けていたのかと思った。しかし、どう考えても、夫に聞いても、そんなはずはないと言ってくれる。かなり色々考えて思い返したけど、愛着障害ではないはずだ。それでもそういう子はいるのだ。どうか世の中の人たちにわかってほしいとつくづく思う。幼稚園の先生方に理解があったのが、本当に救いだった。
 一日ぶりだったけど、会えて嬉しくて、いっぱい楽しい話を聞こうと思っていた私は、大泣きされて、本当に自分も泣きそうになった。私は一日ぶりに会えて嬉しいのに。話をたくさん聞きたいのに。何故我が子だけ。まだ早かったのか。我が子だけ……。
 その後、写真を見ながらちょこちょこ話しただけで、あまりその時のことなど、何となくしか聞けなかった。
 今回、前回と明らかに違うのは、行く前から、ものすごく楽しみにしていることだった。
 何をするかも自分でわかっているし、準備の段階からとても張り切っていた。風邪もひかないよう、気を付けていた。班を決めたり、それについてもたくさん話してくれた。
 私の方は、行けば少しはせいせいするのではと思っていた。幼稚園の時は結局、心配で仕方なかった。今回は、毎日、学校の下校時間を気にしながら行動し、帰ってきたら宿題がいやだーいやだーとか聞かされ、ゲームの話の相手をさせられ、晩御飯の準備もバタバタするし、いきなり遊ぼーとか言ってくるし、テレビを観たら「もう時間ないー!」と怒り、お風呂までもモタモタしながらしゃべり続け、お風呂から上がると時間割そろえるのが面倒くさい〜とひとしきり愚痴言って、寝る時も「お母さんまだ〜」とけしかけられ、やっと寝る。もう最近は、子供が寝てからテレビ観る時間もほとんどなく、一緒に寝てしまうか、寝れない時は、こちらも寝不足になってしまう時である。
 こういうのがない穏やかな日が久しぶりにやってくるなんて、なんて楽しみなんだと思っていた。
 がしかし。日が近づいてきたら、「あれ?」と思うくらい、楽しみではなくなってしまった。