少し気持ちが荒れて、数日間一人になると涙が流れて仕方がなかった。夫や息子に元気な姿を見せられず、時々苛立って八つ当たりをし、迷惑をかけていることがわかったので、とうとう夫に打ち明けた。
 「そんなこと考えていたらどこも行けないよ。」「考えすぎだよ。」と言われるのを覚悟でとにかく言ってみた。
 夫は「10年間閉じていた箱のフタが開いたんだね。良かったね。」と言ってくれた。
 でも、それから私はどうしたら良いのか、感情をどう持っていけば良いのか、気持ちをどう整理すれば良いのか、今度はしばらく途方に暮れていた。
 今も、こうしよう!という方向は見えていない。熟考したところで、結論が出ない。
 ただ、すごく悲しかったのだ、ということがわかった。すごく傷ついた気持ちがしたし、私は故郷を喪失したのかもしれない。でも、本当に恋しかったら、また行くのかもしれない。という気持ちもわき始めている。その時には、恐怖心が拭えたわけじゃないけれど、行きたいなという気持ちが勝っている時なのだろう。そういう気持ちは、自然にまかせたら良いと思う。今は、恐怖心がまだあるので、身体がしんどいなと思ったら、無理して行かなくても良い、という気持ちの方が強い。
 慌てなくても良い。人の気持ちは変わることもある。変わらないかもしれないけれど。
 ただ、自然にまかせられるようになるそのためには、やはり悲しみとかつらい気持ちは、しっかり味わわないといけない、と今回つくづく思い知った。
 メンタルケア・アドバイザー養成通信講座を受けていて知ったこと。何かをこぼした時に「拭けば良い」「代わりの物を持ってくれば良い」などと思う前にまず「こぼしてしまったー!」という気持ちをしっかり自覚し、味わう。それから気持ちを切り替えること。そうやって、些細な日常から負の感情をちゃんと味わっていれば、プラスの感情に向かう力が強くなるということだ。そういう基盤があってこそ、人は本当の意味で強くなれるという。私はそれを身をもって今回思い知らされた。
 10年以上も前の感情が、当時より強く出てくるなんて、思ってもみなかったし、それに対して「どっちにする」とかいう結論が出たわけではないけれど、ある程度は、感情を味わい尽くせたかなと思う。