当日のリハーサルでは、前日笑えたほどの緊張はもっと増していたようで、そのドキドキがこちらにまで伝わってくるくらいだった。息子にしたら、簡単なリズムのはずなのに、とにかくガチガチである。リハーサルでは、先生方だけのバンド演奏も見ることができた。リハーサルだけでも聴けて良かったと思う素晴らしい演奏だった。思わず拍手。
 息子は、その場では最年少で、その次の年齢が、小学6年生のギターだった。あとは、中学生が一番多く、高校生もちょこちょこいた。社会人もいた。
 学校の部活はどうしているのかな。そういうのとはまた関係なく、自分たちの意志で選んでいることが感じられて、とても嬉しくなった。男の子も女の子も、ギターやベース、サックスやドラム、など、好きで演奏している。見たところ、おそらく親の期待だとか、親の意志で、習いに来ている子はいないのではないだろうか。皆自分がその楽器が好きで選んで演奏している。そうでなければ、そういう楽器を選ばないのではないかなと思うし。それに、そういう演奏に加わっている子たちは、上手だろうが下手だろうが、とにかくそういう場に出てみたいという気持ちがあるわけである。なんて自主的な気持ちを持った子たちばかりなんだと思うと、可愛くて仕方なかった。
 息子ができるまで、いや、少年と言って良いくらい大きくなるまで「子供ってどんなに大きくなっても可愛いもの」ということが理解できなかった。高校生の子供を持つお母さんが「高校生でもまだ可愛い」と言っている気持ちがよくわからなかった。でも、そういう子たちが演奏しているのを見て「なんて可愛いんだろう」と思った。友達同士でやっている子も、思春期特有の内生的な感じの子たちも、演奏するときは一生懸命。少し緊張していて、表情が少し硬かったり、楽しそうだったり。
 息子の、学校で仲良しのお友達が来てくれて、担任の先生も観に来てくれた。息子は、口角を挙げて、作り笑顔を見せていたが、演奏は緊張のためなのか、もったりとしたものであった。演奏をし終わったらどうして良いかわからず、足を踏み外して落ちるように舞台から降り、挙動不審になり、進行してくれた声楽の先生が連れて帰ってあげようと近寄ると、アニメで見るような、追い詰められたネズミみたいに、怯えた様子で後ろの壁に張り付いていた。ちょっと笑ってしまったが、そんなにも緊張したのに、何とか演奏したんだという感慨深さもあった。私は、本当にそういうことをできるだけ避けて通ってきた。息子はちゃんと向き合えている。その後、しばらく皆の演奏を観て、それから帰ってきた。
 「次は、もう一曲くらい演奏したい!」と、抱負を語っている。数人のお兄ちゃんとお姉ちゃんたちのドラムの演奏を観て、少し刺激も受けたらしい。息子が中学や高校になった時、親と今ほど喋らなくなるだろう。運動も特にできずおそらく運動系の部活に入らないであろう息子は、ストレスもためることだろう。そんな時に、こういう趣味があってこういう場があると良いとつくづく思う。きっと自分の気持ちを発散したり、集中して無心になったりと、気持ちを落ちつけられるものになるだろう。
 楽器ができるだけでなく、人前で発表し、またそのために、おそらく自主的に努力してきた子供たちに心を動かされた一日でした。