大太鼓するために、鍵盤ハーモニカやリコーダーの練習をするんだという気概は見られないまま、数週間経った。もうすっかりあきらめたのだと思っていた。
 ところがある日、「僕ね、大太鼓に決まったんだよ!」と声を弾ませて帰ってきた。
 最初、4人立候補したが、鍵盤ハーモニカやリコーダーのテストがあるとわかって、2人脱落。テストでは2人が臨んだらしい。そして、息子は選ばれたとのこと。そんな特別上手ではないと思うが、リコーダーはどうしたの?と聞くと、「昼休みに一人で練習していたんだ」と教えてくれた。
 「……!!」
 水泳記録会の時と同様、またビックリだ。息子にそんな成分があるなんて!水泳記録会の時も書いたように、息子はガッツだとか、根性とか、頑張ることにおいて、全然やる気のようなもの、気概を見せてくれなかったのに、水泳記録会で見せてくれた頑張り。それを今回も見せてもらった。ちょっと感動だ。いつの間に、こんなに自分でできるようになったのだろう。無理に親がけしかけなかったから良かったのか?
 本当に息子は色々できなかった。ドン臭くて、私の子供時代どころではない、色々できなさ加減と、やる気のなさ。自分の本当に好きなことしかやろうとしないので、それ以外には、「ちょっと過ぎるのでは」と心配するくらい、やる気を見せてくれなかった。よく呆れてイライラしたが、そんな息子に対して「ダメだね」とか「全然できていない」とかは言わないように耐えてきた。ただ「こうやったらできるよ」とか話しただけで、わーっとグズり、大泣きして、子供の方がイライラを全開にするので、それ以上のことは何も言えなかったというのが事実だ。幼い子供は、つくづく我慢強くない方が良いと実感している。
 我慢は、自分で少しずつ身につけていける。それも、親が日常的に、これはやめようね、それは良くないよ、こうしようね、これが良いよ、と伝えるにとどまるくらいで良いと思う。いつか必ず伝わるのだ。
 やりたいことは、子供が見つける。わからないようなら手助けする。色々なチャンスを与え、自分で選ばせる。自分の方針が間違っていなかったのだということを、息子が見せてくれた。
 こんなにもマイペースでのんびりで、ある部分で発達の遅い息子が、そうやって、頑張りを見せてくれるようになるなんて、子供ってやっぱり「自分で育つ力」があるんだ。けしかけたり焦ったり、自分の子供のころと比べたりする必要なんてないんだな。もどかしかったけど、色々言いたいのをグッとこらえてきて良かった。
 それとは裏腹に、今度は「僕はそんなにお母さんが思うほど、○○ができるわけじゃないよ。」とか、ちょっと誉めるとそう言うようになったので、戸惑ったが、これもまた、同世代の友達を意識し始めた証拠らしい。あくまでも健全な精神らしいので、こちらとしては、そう思うんだね、で良いらしい。