記録会がある数日前に、「プールに行って、練習がしたい」と言うので、休みの日に、連れて行って、泳いでみた。5メートルは確実に泳げるので、もう少しこうすればもっと良いよ、と気になる所を言ってみたら、7〜8メートル泳げるようになったので、良かった良かった、スゴイねと話した。
 これで、水泳記録会で緊張してうまく泳げなくても、お父さんやお母さんは、7メートルちょっと泳げたのをわかっているからね、本番は緊張するものだから、うまくいかなくてもガッカリしなくても良いんだよと、夫も話していた。
 夫が毎回、7メートル付近で、息子を抱きとめてくれるので、息子も「プールの向こうにお父さんがいると思って頑張って泳ぐよ」なんて話してくれていた。とは言え、息子の性格からして、頑張って根性見せて泳ぐなんてことは、あまり想像できないことである。
 運動に関して、いや全般かな、ヨシ良い所見せてやろう、という気概がない。あっできない、と思ったらそこまでだ。マラソン大会も好きだし、自転車も大好きだけど、粘りがあるといった感じなだけで、頑張ってやる!といったようなところはない。スキーも好きで、上手になるまで、何度こけても立ち上がって滑りを繰り返していたことには感心したけど、その頑張りは、上手くなるために、一生懸命ではあったけど、必死になりたい、という感じではなく、こければ起き上がれば良い、と達観したかのような頑張り方。
 なので、二年生で、数メートルで立った時も「ああ……」くらいで、我が子らしいと思ってしまった。帰宅後、あまりの達成感のなさからか、想像していたのと違ったからか、ひどくグズった。
 今回は、まず夫がやたらに熱を入れて教えていた蹴伸びがキレイであった。コーチがついたこともないのに、あんな蹴伸びができるのなら、25メートル行けるのではと誤解するほどだ。とりあえず、それを見て「ああ5メートルは行く」と確信を持った。そして、そのままバシャバシャとしぶきを上げながら、折れ足キック全開のバタ足をしている。ガンバレ……!心の中でつぶやいた。入門者がやりそうな手の動きで、無理矢理なクロールをしている。もがいている息子を見て、ちょっと感動した。頑張っているじゃないか!初めて見たぞあんな姿。いや、生まれて8年ちょっと、見たことのない姿である。子供が一生懸命「もっともっと!」という感じで頑張っている。
 そして、真ん中のラインを超えて、少ししたら立った。
 おお、すごいじゃないか!習ってもいないのに、なかなかのストリームラインで、しかも、ガッツを見せてくれた。ウチの子に、そんなものがちゃんと存在していたんだという喜び。手前のレーンで25メートルに挑戦している子にあがる声援をよそに、私は我が子に拍手を送った。
 プールサイドに上がってから「息継ぎをしてみたんだよ」と言い、その笑顔に興奮の気持ちが表れていた。
 帰宅後、グズることはなく、終始機嫌が良かったです。息子があんな面を見せてくれて、誇らしく、何だか自分が誉めてもらったような気分でした。感動しました。