意外と、子供がグズることに関して、両親は、特に大きな衝撃を受けているわけではない。ということもわかった。
 その後、『子どものための 自分の気持ちが<言える>技術』(平木典子著)に書いてあって、なるほどと思ったこと。子供が、泣くなどの感情表現をした時に、親は「私は悲しい時に泣く」からと言って、子供も悲しいから泣くとは限らないということ。親との違いは、間違いではないということ。自分と違うから、何故そうなのだ?と怒ったり不満に思ったり、わからないと悲しむのではなく、その子の個性として、好奇心を持って接しようということ。
 色々言い聞かせてみたりして、心から納得するのはなかなか難しいけれど、そうやって夏休みが終わった。
 息子は、私が物ごころついてからあまりグズったことのない私の両親に対して、感情を出して、おおいにグズったおかげで、私が両親にどのような思いを抱いていたかがわかった。グズった時の自分の気持ちと、その後の息子への気持ちを感じたことで、親が子供に対してどういう思いなのかがわかった。自分の両親も、グズられた後でも変わらぬ気持ちを持っていたことで、両親の、子供や孫への思いがわかった。私は、物ごころついてから、グズらないようにしていたことも、それが苦痛ではなかったけど、気を使わなくちゃ、きちんとしなくちゃという思いにとらわれて、自分の気持ちは二の次三の次にしていたこと。自分のことも、親の気持ちも、色々思い込みが多かった。今回、息子を叱っている構図がどうもおかしいと気付いて、息子に謝った。
 あらゆることを、息子は身をもって教えてくれた。
 一学期に、荒れて物に当たったり、泣き喚き、夏休みで私の親の前で感情を露わにしておおいに不満を言い、グズり、泣いたことで、私も息子も随分成長したように感じた。
 二学期に入り、グズリが激減した。「グズリを我慢して、ストレスにはならないの?お母さんは時々怒っちゃうけど、それでも気持ちを発散させても良いんだよ。」と言うと、「グズグズするより、ちょっと我慢した方がラクだ、って思うようになったんだ。」と、誰が言ったこともない、どこかで聞いたこともない、自分の言葉で、自分の気持ちを伝えてくれた。私はその成長にとても胸を打たれた。こういうことは、自分で感じて自分でコントロールするのが一番だと思っていたけど、本当に自分で気がつくんだなあ、ということ。それを目の前で見せてもらった。
 夏休み明け、また違ったことで少し戸惑うことがあったので、スクールカウンセラーの話を聞きに行ったが、このことに関しては、カウンセラーの方も感動してくださった。
 「ここに来る人は、不登校とか、自傷とか、そういった悩みの方も多いんです。子供の負の気持ちを受け入れて、その気持ちとしっかり向き合っていった方が良い、と伝えながらも、それが良いはずと知っているからそう話しているけど、本当にそれが良いんだ、とわからせてもらった素晴らしい例です。お手本になる。ありがとうございます。」と。私もそれを聞いて胸がいっぱいになった。