昨年の夏休み。
 いつもの年は夫の実家に行くのだが、この年は夫の仕事の都合もあって、私の実家を訪ねた。
 そこでも息子は遠慮がなかった。ストレスを発散するようにグズる。
 私には、両親の気持ちは「ありがたく」いただいて、それに精一杯応えなくては、という気持ちが強い。それは、幼い頃からの積み重ねもあるのかもしれないし、私の気質もあるので、仕方のないことなのかもしれない。
 しかし「精一杯応えたい」気持ちとは裏腹に、息子は、そんなことお構いなしに平気でグズる。機嫌が悪い時とか、自分の思い通りにいかない時は、相手の気持ちなどお構いなしにグズグズ言う。それで、何度も私はイラ立って叱ってしまった。
 しかし、息子が、グズったことを私の両親に謝った時に、「ああ私はこういうことをしなかった。」と気付いた。さらに、息子が謝ったことで、「私には後から謝ったり話し合ったりするチャンスがなかった」ということと、両親の前では泣いて感情を発散させることを極力しないように頑張っていたので、「気持ちを伝え合う場がなかった」ことに気付いた。
 息子は、「グズっている時に、こんな自分なんかいなければ良いのに、って思ったことがある」と話してくれた。グズって、嫌なことを言う息子に、私は追い討ちをかけるように叱り、息子を傷つけることがよくあるのだが、それが良くないのだと、とても胸が痛んだ。「ミツがグズったら、腹が立ってつい怒ってしまうし、もういやだ!って思うけど、ミツのことがいやになるんじゃないよ、これからもつい言ってしまうかもしれないけど、ミツがいなければ良いのに、なんて思ったことないよ」と伝えたが、いくら普段「大好きだよ」と伝えていても、そういう風に子供は傷ついているんだと感じて切なかった。これからもそういうことを伝える大事さがよくわかった。
 息子は、私の実家にいる約10日間、よくグズグズ言って困らせて私を怒らせ、色々なことが「台無しになった!」と私は思っていた。疲れる、と思って、今後の日常を思って、何となく重たい気持ちで帰路についたのだが、間もなく自宅に着くという時に息子が言った。
 「ああ、楽しかった!ここに前回来たのがつい5日前みたい。早く感じるよ。それくらい楽しかったよ!」と。
 ええっ……?!内心驚き「そりゃあ良かった〜!」としみじみ返事した。だって、私は、息子がグズグズ言って色々な楽しい場面が台無しになった、叱ってばっかりで息子も楽しくなかっただろう、と申し訳なく思っていたのでね。
 そこで、それまでうっすら感じていたことがハッキリ感じられた。
 息子にとって、「グズる」という表現は、感情表現の一環に過ぎないのだ。
 確かに、そうやって育ててきた。好奇心を目一杯育むには、泣くとか怒るとか、嫉妬とか悔しいとか、そういった否定的な感情をもすべて受け止める必要がある、と。頭ではわかっていたけど、でも実際にグズられると、感情がグツグツと怒りで煮えたぎる。頭から煙が出ているのでは、と自分で思うほどに、怒鳴って叱ってしまうことがある。