息子が厚紙で作ったスキー場。
 正直、幼い頃の私が自分で作ったとしたら「やっぱり、自分で作るとうまくいかないなあ」とガッカリする出来栄えだ。でも、息子は満足している。夫に「あれで自分のイメージ通りなんだろうか?」と話すと、「作りながら、色々な発見をしているんだと思うよ。ここはこうしよう。こんな風にできた。とかね。」と言っている。
 なるほどお。作りながらの発見は楽しいことだろう。
 しかも、息子の大好きな「スキー場」である。そう言えば、作る前に、「僕、スキー場を工作したいんだ。」と言って、紙を持ってきて、「こういう風なのを作りたいんだけど、これはどうすればうまくできるだろう?」と相談してきた。彼の中で何らかのイメージがあり、それに近づいていく、その過程を楽しんでいるのかと気がついた。
 物を作る上で、大切なことですね。
 ちなみに、最近読んだマンガ『宇宙兄弟』(小山宙哉著 講談社)で、気に入った台詞があります。モノづくりの上で、本気の失敗には、価値がある。といったような言葉でした。勉強中も失敗がある度、ちょっとした問題でも間違う度に、ひっくり返って泣くような息子には、ちょっとは響いてほしい言葉です。
 その後、息子は、厚紙でスキー板やスノーボードを作り、さらに厚紙で、人の形を作った。これを使って遊ぼうと、幾つものコースを紹介され、難関コースを滑らされる羽目に。
 まあ、現実の世界で一緒に滑ってやれないので、せめてこれだけでも一緒に滑ってやろう。せまい和室の中を、モロイ厚紙が壊れないように気をつけながら、慎重に「大胆な演技」を見せながらの滑走である。
 これが、やっぱり大人には退屈でして(笑)。
 でも、その力作をしばらく取っておいてあげた。
 さらに、テレビ番組SASUKEのようなアスレチックなコースを作って、指を人に見立てて、様々な仕掛け、難関を突破して行く、という遊びもやらされた。さらにもう一つ作った辺りで和室はいっぱいになり、結局そのせいで遊びにくくなり、息子も遊び飽きた。

 その後、地震が起きて、スキーもできなくなり、その工作でも遊ばなくなり。作った「スキー場」以外は、もう遊ばないと言ったので、解体し、また使えそうな部分以外は処分したが、スキー場は長い間、置いていた。
 また何か意欲が湧いたら何か作るだろう。
 絵本を作ってみたり、工夫してページを閉じてみたり、なかなか彼の創作意欲は見ていて面白い。急に湧いてきて、熱中する。
 でも、この前、息子が自分の大好きなぬいぐるみ、白いねずみの形を描いて切り抜いてみたら、初めて「思ったのと違う」と強く思ったらしく「白ねずみちゃんはこんなじゃない!全然違う」とガッカリしていた。自分の思い入れのあるお気に入りのぬいぐるみだからこそ、自分の作品がイメージと違うことに落胆したのだろう。でも、その、ガッカリしっぷりがちょっと可愛かった。