息子は時々、突然思い立ったように、ウチの中で、工作に夢中になることがある。
 元々、毎月届く雑誌に付いてくる付録も好きだった。
 夫も、子供の頃、大好きだったと言っている。
 私はと言えば、あまり好きではなかった。根気がないのだ。早く出来上がりを見たくて、雑になってしまう。雑になるとどこか手を抜いてしまったり、肝心な部分をしっかり作っていないので、結局失敗に終わる。親がどんなに楽しそうに、一生懸命に、私の付録に取り組んでくれても、私はやる気が起きなかった。出来上がった自分の作品が、雑誌の写真と程遠いのは、幼心にわかるし、何かが上手く作動しなかったりする。
 その点、息子は、根気がある。「どうしてもうまくいかない」と困っている時には、夫や私が助けるが、大体一人で時間をかけてでも完成する。1〜2歳の頃、ブロックを組み立てていて、うまくいかないと、いちいち「ギャー!」とひっくり返って泣いていたのが嘘のようだ。そういう「組み立てる」ような遊びが始まると、またうまくいかなくて泣き出すんじゃないかと、ハラハラドキドキ、本当に動悸がしてしまうくらい、しょっちゅう泣いていた。まあでも、息子の作る物に感心し、誉め方を工夫していたのが良かったのかな。夫も私も、息子に頼まれた時しか、手を出さなかったし。よくわからないけど。でも、そうやって段々根気がついてきて、物を組み立てるようになった。雑誌でごくごく簡単な物から取り組ませていたのも良かったのかもしれない。上手くいかないと、またよく泣いていたけどね。でも、そこは親の手出しはグッと我慢。下手とかも言わなかったし、そんなこともあるよ、という程度だった。私なんか自分で作ることさえしなかったのに、一人で頑張ってスゴイねーと思っていたし。
 小学校に入ると、図画工作の時間の、絵は、以前も書いたように独特だし、工作は、発想も作品も優れているというのからは程遠く。でもそんな息子は、クリスマスプレゼントに、ラジコンのショベルドーザーを頼んだ。面白いと思ったのは、自分で組み立てて動かせるようにするというのだ。夫に持ちかけられたにしろ、息子はそれに乗った。そして、数か月かかって、夫と少しずつつくり上げた。夫の手伝い方は、なかなかの巧妙さで、肝心な所を「ここは、お父さんが仕上げをするね」とフォローしつつ、息子が「自分でやった感!」をなくさないようにしていた。
 そのお陰なのか、息子は、組み立てるとか、作るといったことに、自信を持ったようだ。
 時々思い立ったように、工作をする。夫が上手だなと思うのは、ごくごく簡単な所から始めるところだろうか。誰にでもできそうな物を提案して、それを二人で楽しむ。職業柄なのかしら。私にはうまく誘導できない。息子をいら立たせてしまうことが多くてね。
 そして今回は、息子は厚紙を使って、スキー場を作った。雑に貼りまくったセロテープと、雑に切った厚紙が、コースの太さとかもゴチャゴチャなのだが、それが返って味を出している。息子は「だいぶできてきたよ」と言いながら、私に説明してくれる。ゴミみたいな小さな塊がたくさんくっついているのを指して「ここは、スノーボード用のコブだよ。」と説明し、厚紙が突然切れている所を指して「ここは、スピートつけて跳ばないと、返って危ない所。」と言う。坂の角度が緩やかだったり急だったりする所は「こっちは、初心者用コースだよ。」「こっちの上級者用コース、怖い人はここをよけて滑るんだよ。」などと詳しく話してくれる。