何故今回、あえてこういうことを文に書こうと思ったのか。
 やはり一番に、こういうことに悩んでいるお母様方が、結構多いということにある。本に書いてある簡単なチェック、診断を読んで、怯える母親が多いのだ。幾つかしか当てはまらないにしても、その幾つかが、強く出ていると、ウチの子、何かおかしいのではと心配し、悶々としている。私は知っている範囲内で情報を伝えることはできるが、あくまでも素人である。あまりに心配なら、専門家に相談することを勧める。
 あきらかに問題を感じる子供に対しても、専門家は慎重で、まず母親の気の持ち様を指導するのが、一般的のようだ。そのくらい、親の対応や接し方、というのが、一番に大事だと思われる。
 私の知り合いで、障害を持った子供のお母さんがいる。お互いが結婚する前から友達なのだが、その子供さんが、障害を持っていたということで、付き合いや連絡を遠ざけるとか、話しにくくなるとかしたくなかった。気が合わないことが強ければ仕方ないけれど、特にこれといった原因もないのに、何となく距離を置いたりしたくなかったので、いつも通りの、細々とだが連絡を取り続けている。最初は、彼女の精神的な支えになりたいとか気負っていたが、彼女には彼女にしかわからない葛藤があると感じて、以前と同じペースで連絡を取ることにした。
 そんな彼女、ようやく子供が9歳になった時に「障害があろうと、なかろうと、子供を育てるという苦労に、大差はない」というようなことを書いていた。私はその言葉を長年待ち続けていた。私が言うと「お前が言うなー!!」だろう(笑)。実際に、障害のある子供を育てた経験のない者にとっては、その苦労を知り得ない。計り知れない大変な思いをしてきたと思う。対子供でもそうだけど、そのことで夫婦間のこと、そして世間の目など、私には想像できない。ただ、子供を育てるって、目に見えた障害がなくても、皆大変な思いをしている、という点では、変わりがない。皆が子供を思って、一生懸命で、その葛藤を聞いているだけで、私は感動することが度々ある。だから、彼女がそう書いたのは、おそらく色々な母親と話し、実感してきたことなのだろう。ようやく、「母親の立場」としては、彼女と、少しは対等に見てもらえ始めているのかなと思う。
 少し話がそれたが、世間からの目が一番、傷ついたり葛藤したりが多いだろうが、彼女が言うように、「子供を育てる苦労に大差はない」という言葉通り、要するに、どんな親子関係を築くかは、そこの家庭にかかっているのだ。
 多くの親が、発達障害に関する情報を見聞きし、不安に陥ると、教育者に相談することがある。又、本を読んでみる。そういったところで、親の接し方を問われる。そして、どうしてうちの子はこうなのか、大丈夫か、という不安が、悪循環になってしまうケースがとても多い。そういう人たちのためにも、もっとデリケートな記述をお願いしたいし、これからの社会の風潮を考えて、学校でもきめ細やかな対応が必要だと思われる。親の不安をあおらずに、まずは、子供を囲む周りの大人たちが、どう接すれば良いのかを、皆で考えるべきだろう。