キャンプに関して、少しは経験があるため、覚えの悪い私がどうやって人の手伝いをするかを身につけ、力仕事なども、苦にせずできる私でもある。ここ数年は、毎年数回、デイキャンプにも行っていた。でも、テントでの宿泊には、私は気が進まなかった。
 何故ってね。
 ……まあ色々あるけど、何よりも……クマが怖いからよ!そして虫が大嫌いだからよ!
 虫に関しては、小学生の頃までは、平気で何でもつかんでました。バッタもダンゴ虫も、蝶々も、セミも、カミキリムシも、かまきりも、アメンボも、とんぼも、コオロギも。それが、色々な理由で少しずつ嫌いになっていき、大人になった私は、別に「ヘタレ」と呼んでもらっても良いわよってくらい、虫が苦手。息子に退治してもらうくらい情けない。もうとにかくあの姿形が大嫌いなのだ。テレビやパソコンの画面にその姿形を見るだけでもいや。目をそむけて次の場面になるのを待つ。
 さらに、クマに襲われたら死んでしまうじゃないのよ、といった恐怖も強い。クマについては、高校の時に読んだ赤川次郎の小説で、珍しくミステリーではない、クマについての恐怖を書いてあるのを読んで、すっかり強い恐怖心が植え付けられた。あまりに怖くて、寝る間も惜しんで一晩で何とか最後まで読みきったくらいだ。近年、テントで寝ていた女の子が、テントの外から何かに押されたのだが、後にそれがクマだとわかったというエピソードも新聞に載っていたりして、テントで寝たらクマがやってくる!と、すっかり怖くなってしまってしまいました。それで私は気が進まないとずっと言っていたのだ。が。
 少しずつ買いそろえていった夫は、ある時「これで全部揃ったよ〜」と報告してきた(笑)。シュラフも、寝る時のテントも、その下に敷くシート、テントの中に敷くシート2種類、ランタン幾種類か。
 それでも、まだ実現は遠いと思っていたのに。
 何だかいつの間にか、行く雰囲気が出来上がっており、息子も楽しみで仕方ない様子なので、私も仕方なく、了承。
 そして、実行に移った。
 これがね、楽しかったんです。楽しかった、というより、良かった。恐ろしさを別の場所に置いて、気持ちが穏やかになれて、ニュージャージーで生活していた頃のような落ち着きを感じることができた。ニュージャージーから、少し北のニューヨーク州に入ると、マンハッタンのようなニューヨーク市の大都会とは全然違った風景を見ることができる。たくさんの湖と山々に、何度心が落ち着いたことだろう。その、地に足が付いた気持ち、自分を取り戻した感じ、自分が自分でいられる澄んだ感じを久しぶりにまた思い出した。