スキーを、夫が息子に教える時。夫は叱りもせず、こうするんだよと起き上がり方を言って立っているだけで、決して助けはしない。イライラもせず、根気よく横に立っている姿には、感心させられマス。厳しさと優しさが同時に存在し、私の理想の子育てがそのままそこにあるのだ。気持ちに沿いつつ、自分で自分の言動に責任を持たせるべく、手出しをしない。
 どの場面でも、私はそれを心がけたいという思いはある。それには、息子が「自分の発言や行動には価値がある」という自覚を持たなければならない。持たせるために、親としてどう接すれば良いか。あなたの話には聞く価値があるということ、そして選んだ行動には責任を持つということ。できなくて、怒鳴ってしまったり、息子も言い返してきて大喧嘩になってしまったり、その度に息子は泣いたり、私も自己嫌悪に陥って、一人でひっそり泣いて自分を責めたり、そんなことは日々あるので、それが難しいこともよくわかっている。夫のスキーの教え方は、常々育児について夫婦で話し合っているとは言え、夫も覚悟を決めて息子につきあっている。そして、息子も満更ではないらしく、それに応えて頑張っている。そうやって帰りの車などで泣いて発散すればそれで良いようだった。そして、また行きたい、と言うのである。グズグズしながらでもやりたい、という気持ちだったんでしょうね。
 そしてスキーを始めて二年目の小学生になり、学校で少しスキーの授業を楽しんだ。「歩く練習ばっかり。」と少々不満らしいが、スキー場に行けば、歩くのが上手になっていて、もはや私には追いつけないスピードでぐいぐいと進むのだ。あーもう私は、もっぱら食堂でお茶でも飲んで待ってます。と、色々持ち込んで勉強したり本を読んだり。
 そのうちすぐゴンドラに乗って、山の上の方まで行って帰ってきた。回り道の初心者コースを下りてきたというが、1時間半もかけて、転んでは立ちあがりと繰り返してきたらしい。
 「お父さんのレッスンは、体操の先生より厳しいけど、いやじゃないよ。甘くしたり、怖くしたりしないで、今のままで良い。」と言う。
 へぇ。そんな風に思うんだー。やっぱりお父さんがそばに必ず寄り添っているお陰かなあなんて、父子の様子に感心していたら、その次は、リフトに挑戦。その次行った時には、もっと速くなっていて、下りてくる時間が速くなってきていた。
 プルークと言って、昔でいうボーゲン、つまりスキー板をハの字にしての初心者滑りだが、私よりは危なげない。私の方が曲がれるとかそんなことはもう問題ではなくなってきているようだ。スピードが速くたって平気、少しくらい傾斜が強くても大丈夫、と、私よりずっと楽しめているのだ。意外な一面!!!
 次の冬はさらにもう少し上手になっているかもしれない。夫もスキーが好きなので、息子と滑るのがとても楽しいようで、二人で嬉々としてスキー場に向かい、滑ってくる。息子が、両方のストックを振り上げて、楽しい気持ちを全身で表わしながら滑っているのも遠くから見えた。「スキーが好き!すきはすきー!アハハ!」とか言ってるし。帰りは温泉入ってスッキリ。のんびりリラックスしてから帰るのも、楽しみの一つみたい。
 それにしても、スキーって面白いなあと、いつも下の食堂から見上げていて思う。当たり前だけど、滑り降りるために、リフトに乗って上がっているのだ。リフトに乗って上り、スキーやスノーボードで滑って下りてくる、というそれをひたすら繰り返して、皆楽しそうだ。
 きっと、子供、若いお兄ちゃんやお姉ちゃん、おっさんおばさん、みんながコケたり雪まみれになったりしながら滑っているのを見るのも、息子にとっては「そういうもんなんだ」と励みになりながら、頑張って滑れるのかもしれないな。