参観日には、気分的に、まだかなり苦痛を伴ったが、以前よりは動悸に悩まされずに済むようになった二学期の頃。
 担任の先生との個人面談があった。その時に、息子について、図工があまり得意ではないのでは?ということを言われた。そりゃ得意不得意は誰にだってあるだろうという思いはあったし、物を組み立てることに関しては、息子は雑だが決して不器用ではないことがわかっている。しかし、先生の「苦手意識を持ってしまったら、図工がつまらないから、そういうのを持たないようにもっていけると良いなあと思う。」という発言で、まあそうだよな、どうせやるなら楽しい方が良いよなと思い、どうやって誘導したら良いかなどと話し合った。特に解決法などないが、多少先生の熱意を感じて、まあ少しずつ息子の気持ちを楽しい方に持っていけたらと思っていたのだが。
 翌日、息子はシュンとして帰宅。先生に怒られたりしても、サバサバしたタイプの息子なのだが「今日先生に、絵の練習しなさいって言われた。」と落ち込んでいる。絵って練習するの?……一瞬絶句し、感情的になりかけたが、落ち着いて「何で?」とようやく聞いた私に、息子はこう言った「僕、図工が苦手なんだって。」
 ……その言葉に、冷静さを失い、腹を立ててしまった。「苦手?!苦手って誰が言ったの?」「苦手っていうのはね、本人がそう思うかどうかであって、先生や他人に決められることじゃないんだよ!」昨日、苦手意識を持たないようにしてもらえると図工が楽しくなると言ったのは先生ではないか。何故、「アナタは苦手」と言ったのか。
 その後、息子と色々何度か話し合った。息子は、絵を描くのがさほど嫌いではなかったはずだ。幼稚園の頃には、周りと比べて確かに少し見劣りはしていたが、園長先生の好みではあったらしく、誉められたこともあるくらいだ。息子いはく、最近嫌いになりつつあるのは、色の塗り方を細かく言われて、はみださないようにするのがとても疲れて嫌な作業であること。縁取りして中をサラサラ塗るのが良いと言われるのがうまくできずにイライラすること。それらが絵を描くのを苦痛にさせているとわかった。「先生に評価されるようにうまく描くこと」が図工嫌いにさせている。
 そして、私は色々と探って、一冊の本と出会った。『子どもが絵を描くとき』(磯部錦司著)という本である。