息子の通った幼稚園は、私にとっても本当に楽しい場所だった。
 三年間、事務の先生の始まり、年少に入る前に時間預かりでお世話になった先生、年少、年中、年長の時の担任の先生。それぞれの先生に、それぞれの年齢の時の相談事をもちかけ、親身になってもらった。
 ここの土地に来る前、私は札幌に住んでいた。子供ができてから、頼る人もあまりいなかった私にとって、保育園は、心のよりどころだった。働いていたわけでもなかったので、無認可だったが、都会のお陰で、様々に保育園は存在していて、見学し、比較することができた。温かい保育士さんたちのお陰で、安心して週に1〜2回、預けることができた。
 その後、今住む土地に来た。しかし、毎日散歩しても、散歩したり遊んだりしている母子に会わない。雰囲気が似ているからと声をかけやすい親子にも会わない。息子は人見知りがひどくなり、元々人見知りはあまりせずに場所見知りが激しかったため、新しい土地で、硬い表情を見せるようになった。時期的にも、反抗はいっそうひどくなり、子供が少ないため、又、知り合いの親子もいないため、外で反抗されるとひどい孤独感におそわれた。
 無認可の保育園は見当たらず、認可の保育園に行ってみたが、働いてもいないのにと言わんばかりの心無い応対で、何度も何度も傷ついた。夫が出張で、不在の時に、メニエールの症状で息子を抱っこできず、仰向けにしかなれない私は、泣いている息子の横で同じくらいの大声で泣いたこともあった。誰にも助けを求められなかった。
 保育園に預けることをあきらめたものの、やはり体調はそんな風で優れず、いつまたメニエールの症状が出るのか、自分のストレスもあったし、育児の不安もあって、どうしても息子を預ける場所がほしかった。そこへ、幼稚園でも2歳以降なら時間預かりをしてくれる所を知り、恐る恐る連絡を取ってみた。また傷つくのが怖くて、ようやく決意しての電話だった。そして事務室へ。
 そこで、事務の先生と話して、その優しさと温かさに、感動し、緊張が解けて涙ながらに話をした。面白い人でもあり、私の気持ちがとても軽くなった。
 2歳代の息子は、まだまだ赤ちゃんのようだったが、そこで担当してくれた先生も、息子を心から可愛がって下さった。泣いている息子でも、嫌な顔一つせず、快く引き受けてくれた。
 そして入園前の、体験入園のようなことをする日。
 年少さんで、息子のクラス担当の先生が、息子を見て、「可愛い〜!」と目をハート型にしてくれた。他の子もたくさんいるのに、あからさまにウチの子だけそんな風に言って大丈夫なの?と思うくらい、その先生は、息子を可愛い可愛いと言ってくれ、その先生が私の息子を気に入ってくれているのが、幼稚園の先生中に有名になってしまったくらいだった。