幼稚園での、父兄の一日体験。
 最初に、10合わせ鬼、という鬼ごっこをした。小学生になるのを直前に、足して10になる計算を暗記のようにして、歌として教わっているらしい。息子はその辺が偏っていて、計算はかなりのもので、返って心配な点はとてもあるのだが、こういうゲームをする時だけは便利だ。うまく生かせるようにもっていってあげると良いのだろうが、未発達な部分も強くあって、そこをいかに上手に誘導するかも親としての課題なのだ。
 さて、最初は、ルール説明の後、試しに練習として一回やってみましょう、となった。鬼の役目となった私たち母親三人が皆を追いかける前、冗談で「気合入れなくちゃ」なんて母親同士言っていた。ところが。
 男の子たちの「つかまらないもーん」「絶対逃げてやる」と、目が本気になったのを見て、つい私の「幼稚園時代のおてんばな頃の心」に火がついてしまい、こちらも本気になった。
 逃げ惑う男の子たちの真剣な表情ったら相当なものだ。目がね。ホント、真剣なんですよ。つかまるもんかっていう。それでまー走った走った。最初は、運動会でアンカーの男の子クン狙いで走り回り、次々とつかまえ、練習終了。逃げ切れた子供たち数人が、マイクで名前を言って嬉しそう。
 横でゼーハーしていると、もう一人のお母さんもゼーハーして「ああ疲れた」と笑っている。やれやれ終わった終わった。
 ……じゃなーい!!
 これからが本番。
 今度は、やっぱり「絶対つかまらないぞ」と、必死の形相の男の子クン狙いで走り回り、次々とつかまえる。が、感じたのは、元々走るのはさほど速くない私が年齢を重ねて、もっと遅くなり、今や速い幼稚園男児より遅いのではないかということ。少なくともすばしこさに関しては劣っている。何故なら、最初につかまえた子と、手をつないでもう一人つかまえに行く時、明らかに私の走る速さにもどかしさを感じて、おそらく無意識だろうが、私の手を振りほどいてもう一人に突進していく男の子たちが何人かいたからだ。「一緒に走っていられないのか……。」と、そのもどかしい気持ちがわかるやら、自分の劣ってしまった身のこなしにちょっとガッカリするやら。で、二度目終了。
 二度目は、さっきゼーハーしていたお母さんも私も疲れたためか、残った子供がさっきの倍以上。疲労度=残った子供の数(笑)。全速力で幼稚園年長児を追いかけるという遊びは、30後半のオバちゃんのエネルギーを簡単に空っぽに近い状態にしてしまいました。
 三度目は、子供たちが鬼になり、もう疲れた私はなるべく早々に捕まえられたくて大袈裟に驚きながら捕まえられて、応援席へ。
 三度目は、息子も残って、名前をマイクで言っていた。嬉しそうだった。
 やれやれ、体力を使った遊びはここまで。と思ったのだが。