ユニコーンの最新のアルバムを聴いて、さらに収録時のDVDを観て、彼らの中で、誰と誰が歌い、ヴォーカルにのぞむ様子がよくわかった。又、皆が、色々な楽器に取り組み、あまりに下手だと笑い合い、結局シンセサイザーで音を出して、そっちで良いじゃないかと笑って決めたり。曲を編集し、主にキーボード、ピアノとヴォーカルをしている阿部は、歌心と、音楽のセンスに溢れる人だ。この才能をユニコーン時代にも感じるが、今は中年の凄みがあるためか、はじけっぷりが青臭くなく、大人ならではの成熟した本物の自由さを感じる。皆そうだろう。20代の若者は、恥ずかしい気持ちやあらゆる気持ちに縛られていて、「若いって大変だなあ」と、若い人と仕事上、よく携わる夫も言っている。「歳をとるって自由になっていくことだ」と。それをしみじみと実感する、20年の時間だ。若い人のフザけ方と、中年になってからのフザけ方とでは、気持ちが全然違う。そのはじけた感じは見ていてすがすがしいくらいだ。
 他に面白いのは、川西の『キミトデカケタ』。DVDで映っていたのだが、収録中に「エルビス・プレスリー風に歌ってみたら?」と言われ、一瞬シーンと間があった後、ちょっと声を低めにして、語尾に味付けして歌ってみた川西。この「一瞬シーン」が笑えた。きっと彼の中で、エルビス・プレスリーが再現されたのね。そして結果、歌ったのが、彼の思うプレスリーだったわけだ。確かにちょっとプレスリーってそんな感じだよねというのと、君の思うプレスリーってそんな感じなのねっていうのとが混ざって、何だか愛らしく、笑える瞬間だった。
 そして、ベースのEBIちゃん。阿部に指導を受けながら、一生懸命音程を取ってヴォーカルの練習している様子を見るにつけ、中年のオッサンが互いに教え、教えられる様子を愛しく思えてしまった。可愛い……と。
 手島と言い、やっぱり練習する様子は、見ていてすがすがしく、愛しく感じる。フザけているだけじゃあダメだ。才能もあっても、練習していることも感じてこそ、その人の魅力が伝わる。それも「すごく」練習しているところを見たり聞いたりすると、こんなに元々力のある人でも努力しているんだなあと心を動かされる。それにしても、練習し、努力している姿を愛しく思えるのは、子供ができたからなんでしょうか。歳を取ったからなんでしょうか。いやいや、本来、人のそういう姿を目にするは気持ち良いものなんでしょうね。