ところで、『トラウマ返し』(小野修著 黎明書房)という本その中で少し気になる記述があった。
 「心理学の勉強を熱心にし、本の通りに対応しようとする親」についてであった。それってまさに私ではないか。それは子供を苦しめることもあるし、親自身をも窮屈にすると言う。
 夫に「私のことだと思わない?」と読んでもらうと、笑いながら言われた。
 「本の通りにできてないから良いんじゃないの?」
 ……。
 まあ良いだろう。
 とりあえずは、その記述にひっかかったため、自分のことを振り返ってみた。
 息子の夜泣きと昼間の駄々コネ、反抗が激しかった時に、心理学の本を手に取り、色々な方法を試みた。本の通りにしてみたこともあったし、そうはできないこともあった。
 しかし、確かに、本を読んで得たものは、その通りの方法、マニュアルなんかではなく、考え方であった。子供に対する考え方。大変だ、ばかりではない我が子の内面の良さ。自分の気持ち、自分の生きてきたことや内面に対する向き合い方。それによって、子供との関係が変わっていったようには思う。
 そうですね、本の通りにはできていません。
 子供には子供の個性やその時、その時の反応があるから、本の通りにしようとしてもうまくできない。もちろん私のその時の反応もある。つい怒ってしまったり。
 今も、決して、本の通りに対応しようとして読んでいるのではない。
 あらゆる症例を知って、自分なりの考えを出していくことが目的で読んでいる。
 最近読んでいるのは、いかに自分と向き合い、誠実に対応していくか、というものと、専門家たちの寄稿誌、カウンセリングの実践、といった3種類に大きく分けられる。もちろんそれ以外のも興味深く読むこともある。
 つまり、いつの間にか、自分の子供との関係についての本からは遠ざかっているんですね。だって、わかったんです。どうなるかわからないってことが。結局は本気で向き合うしかないっていう、答えではないような答えが出てきたんですよね。
 自分が自分と自分の親とのことを考え、そのことを考える時の自分に向き合い、夫婦して向き合う勇気を持ち、どこまで踏む込むか、土足で気持ちに入っていかないかを考え、息子に誠実に向き合うことが大事である。が、それで子供がどうなるかは、誰にもわからない。
 というわけで、心理学の本を読み、勉強していたって、その通りにしようと思ったって、子供はその通りにならない。自分の感情も波立って、その通りにはできない。しようとすると返って親子関係にも自分自身にも無理が生じるということは、一人ひとりが、子供と向き合っていたらわかることだろう。