『こころの科学 140 子どもの悩みをきく』(日本評論社)を読んで感じたこと。
 こういったことを読んで、自分が親として、子どもの悩みの一端でも聞けるようになればという思いはあるが、なかなかそれも難しいだろうということを、残念ながら感じる。
 せめて気をつけたいと思っているのは、心理学を勉強しながら時々感じる「子どもの否定的な感情を受け止める」ということだ。親は強い子になってほしいからと、悲しみだとか怒りだとか苛立ちだとかを、片っ端から打ち消す、という傾向がある。しかし、それは表面的に「我慢して」「言わない」「表現しない」というだけの子になっていく。昨今は、それが特に危険であるということは、ニュースなどで周知の事実だ。
 いやだ!だけではなく、悲しいとか痛いとか、辛いとか寂しいとか、傷ついたとか、意地悪してやりたくなったとか、腹が立ったとか怖いとか、そういう聞くのが辛い感情でも、親は「でも」ナシで、とりあえず聞いてやりましょうね。時々私も怒ってしまいますが(笑)怒った後は謝り、普段はなるべく、受け止めた上で、あれこれ子どもと話し合うようにしたいと思っています。これは、息子がまだ言葉を喋れない頃から心がけていることです。
 今後、こうやって続けられるかどうかは自信がないけど。頑張りたいと思うことの一つ。
 そうしているうちに、子供自身、表面では色々言うけど、受け止められた感情は次第に丈夫になっていきます。つまり、表面はどうであれ、芯の強い、自分の感情に肯定的で、気持ちにゆとりのある子どもになっていく、というのが心理学の見方です。これは、予測ではなくて、多くのカウンセラーがさらにその受け持ちの多くの接してきた大人や子どもを見て「実感してきたこと」なのです。実際の症例から考えられたものであり、報告です。
 色々心理学の本を読むのは、細かにその人の見解などが含まれ、少しずつその考えは違ったり、専門分野も違ったり、同じような症例の人が来ても対応が違ったりするのだが、実際にカウンセリングなど行わない私たちが読んで得ることとは、著者たちの対応の仕方ではない。人間の心理のカラクリについてである。
 親として私ができることは、その通りの対応ではなく(後に書くが、その通りの対応は、したくてもうまくできないのが現実で)、子供と真摯に向き合うこと。それは一緒に過ごす時間であったり、交わす会話であったり、子供が求めてくるスキンシップであったり。うまく表現しきれなくても、子供の求める愛情に精一杯の気持ちで応えることだ。子供の求める愛情は、自分の表現する愛情とは少し違うかもしれないが、子供だけでなく、自分とよく向き合っていれば見えてくるものが多い。また、それは多くの子供に共通するものでもあるだろう。大変な作業ではあるが、その大変さが愛情であり、それを何とかして伝えるのが人としての誠意である。また、それを伝える努力なくしては、子供もその気持ちを表現する術を知らないだろう。
 親という立場だけでなく、人としての在り方をしみじみ考えさせられた本だった。
 このシリーズは、かなり現場の様子がわかるので、バックナンバーも取り寄せながら、どんどん読んでいきたいと思っている。