この夢の話は終わったと思いきや、まだ続く。
 実は、その後の、息子の遊びで「遊戯療法」をあきらかに感じさせる遊びが何度となくあるので、とても興味深く、やはり心理学を勉強している視点から、その遊びに注目してしまう。
 ある日、「母さん、何か怖いものがやってくるよ!僕がお兄ちゃんになって守るからね!」と、ごっこ遊びを始めた。とっさに「あっ、あの夢のことを、遊びを通して再現し、乗り越えようとしているのだ」と悟った私は、ノリノリで遊び始めた。こういう時は、忙しくても普段以上にのってやった方が良い。
 私は丸まって「怖いよう!!」と縮こまってみせた。そうすると、息子は「ようし!!」と言って、なんと「お父さんのネンネタオル的な物」をかかげたのだ。あーやっぱりあの夢なんだな。一瞬しみじみしてしまったがすぐに「お兄ちゃん、助けて!追いかけてくるよ!怖いよう!」と言うと「俺が守ってやる!」とひとしきり一人で暴れ(笑)、「もう大丈夫、僕がやっつけたよ。」と言ってくれた。「ああ良かった、お兄ちゃんすごいね、お兄ちゃんいてくれて良かった、守ってくれてありがとう。」と言うと、とても満足気であった。
 この手の遊びは、少しずつ形を変え、段々大げさなものから遠ざかっているものの、まだ時々させられる。
 最初の遊びがあった数日後、今度は「母さん逃げて!」と言い、「怖い人が追いかけてきたんだよ!ミツは怖い人ね!」と言って、私を追いかけてきた。私は怖い怖いと騒ぎながら、ドアを閉めて、ガラス越しに見ていると、ドアを開けようとするので、取っ手をしっかりつかみ「お父さん、助けて!お父さん、怖い人が追いかけてくるんだ!」と言った。夫は、何度か息子を抱き上げようとしたが、息子は相当抵抗して、怖い人を演じ続けていた。そのうち、どうしても出なければならない時間になってしまい、その時は中断したが、時間がある時には、この遊びをなるべく徹底してつきあってやっている。この場合「怖い人を演じている息子」は、ちゃんとつかまって倒されなければならない。
 そのうち、息子のどもりが面白いように減った。
 そしてまたどもり復活。
 波があるんですね。
 成長はまさに「らせん階段」。そう言えば、息子のどもりについて、昨年の今頃に書いた文がある。そろそろそれを載せても良いだろう。
 息子の成長を隣で見ていてわかってきたことは、何かがグンと成長した時、その成長したものは「そこで終わり」ではないのだ。行きつ戻りつしながら、また形を変えて表に出てくる。
 夢や遊びに、息子の成長のヒントが隠されている。幼いうちはたっぷりとつきあう心の余裕がほしいものですね。忙しかったり、時々怒っちゃったり、で、私もそんな理想的なお母さんじゃないけどね。何がその子供にとって良かったかは、孫ができて何年後かに、子供の子育てを知ってわかることも多いだろう。