息子が6歳の誕生日も近くなったある夜のこと。
 何となく気配を感じて目を覚ますと、横で息子が起き上がり、シクシクと泣いている。決して大声をあげているわけではなく、悲しそうな顔でひたすら涙を流している。
 「どうした?いやなことあった?怖い夢でも見たかい?」と聞くと、
 「とっても怖い夢を見たの。とっても怖かったよ。」と言うので、
 「おいで。」と自分の掛け布団を上げて見せると、いつもするようにモゾモゾもぐりこんできた。ところが、私の腕の中で丸まりながら、また時々「本当に怖かったよ。夢で良かったよ。夢だと思ったから目を開けたんだ。」と何度も言ってはシクシク泣いている。
 あーいつまでこんな風に甘えてくれるのかなあとしみじみ可愛さを実感していた。(同じ布団で寝ると、大抵首がこったり、布団が動いて寒かったりするので、寝苦しく、寝た気がしないのもまた本音なんだけどさ〜。)
 で、翌日「昨夜のこと覚えているか」と聞いてみたら「覚えているよ。」と言ったが、夫が「どんな夢だったの?」と聞くと「言いたくないくらい怖かった。だから言いたくない。」と言う。へぇそうかそうかと二人してそのまま深追いせず、息子もそのまま進行中の遊びに入り込んで夜を迎えた。
 電気を消すまでは良かったのだが、いざ寝付こうとすると、「怖い夢を見そうだから寝たくない。」と言う。しかも目をパッチリ開けて頑なだ。でも怖い夢の話はしたくないと言ったものだから困った。こういうのは、目一杯言葉に出して、目一杯不安がって、目一杯甘えて、目一杯安心感を与えるのが一番良いと心理学を勉強していてもそう思うので、まずは話してもらうのが良い。が、無理に言わせるのは、自ら進んで話す以上の苦痛を伴うので良くないと思い迷った。
 そこで具体的に聞いてみて、それから反応を探ることにした。
 「お父さんやお母さんはいたいかい?」「誰が出てきたかい?」「ミツはじっとしていたのかい?それとも何かしていたのかい?」
 そこでわかったのは、知らない大人の男の人が出てきたこと。その人から、息子は必死で逃げていたこと。周りには助けてくれる人がいなかったこと。そして逃げ続けなくちゃいけなかったのに、立ち止まってしまったこと。
 ここで夢だとわかった息子は、恐怖が最高潮に達して、決死の思いで目を開けたそうだ。
 そりゃ怖かったね。
 ……と、ここまでは良かったが、はてさてどうしたものか。息子は涙を流して気持ちを発散させながら話してはくれたが、不安はそう簡単には拭えず、その気持ちをぶつけてくる。
 こう考えてみたら?という案は思いつく限りしてみた。夢の中の話だから、ということも含めて。