息子の言動で、ハッとさせられたことが二つあった。
 今回はまずその一つ。ごっこ遊びもからんでます。
 ちなみにこの文を書いたのは、やはり何ヶ月も前のこと。いまだ、ごっこ遊びは盛んです。彼の世界はかなり面白いものになってきている。とりあえず今回は、数ヶ月前のエピソード。
 息子を病院に連れて行った時のこと。
 広い待合室から、呼ばれて、さらにその中の診察室へ続く廊下で、息子は四つんばいになった。「恥ずかしい」。咄嗟に感じて「おかしいでしょ。手をついて歩かないで。赤ちゃんみたいだよ。」と言うが、まだ続ける。診察室に着いて「ホラホラちゃんと立って。」と言うと……「ボクは蛇なんだよ。」と。
 またごっこ遊びだ。
 行儀が悪いのは良くない。公共の場でそういうことをすれば、今後もやっぱり注意するだろう。でも、そうか、息子の頭の中では、そういう世界が広がっていて、それになりきって、楽しく演じていたんだなと思うと、少し気持ちがあたたかくなり、イライラせずに済んだ。そして「そうだったのか。蛇さん、蛇さん、じゃあ服を脱いでね。」と乗ってやると、とても素直に、喜んで脱いでくれたのだ。
 子供のこういう世界は、そのうち段々消えていく。現実世界で頭の中があれやこれやと忙しくなる。でも私は、子供のこういう心の中の世界、ファンタジーをも大事にしたい。きっと彼の頭の中で、とても文学的で柔軟な心が育っているはずだからだ。
 理数系、理屈ばかりで融通の利かない息子の頭なのだから、これくらいのファンタジーがあっても良いと思うのだ。
 そんなこともあって、息子のごっこ遊びはとっても楽しい。と思えるようになっていった。