そもそも、私は走ることが好きではなかった。
 それこそ、短距離ならまだマシ。短距離は遅い方だったけど、訓練したら速くなるタイプだと言われていた。例えばハードルの課目があった時に、集中的に練習をしたら、クラスの中で何番目かに速くなった。でも、そもそも走ることが好きではない私は、特に訓練もせず、長距離などもってのほかだった。
 何故でしょう?
 ……しんどいからです。
 走るのって、ゼエゼエする上に、身体が重く感じて膝が痛くなる。そう言えば、まだ乳児の頃に、膝が弱い子だと言われたらしいし。それに、長距離だと退屈だし、頑張ると気分も悪くなる。マラソン大会の後に、気持ちが悪くなって、何度か保健室で寝込んだことがある。ウオーキングしていても、膝にまず来る。歩いているとポキポキ鳴って痛くなることもある。とにかく好きじゃない。
 でも、身体を動かすのは嫌いじゃない。球技なんか、下手でも大好きだった。ボールを追いかけるなら、ゼエゼエしても構わない。バトミントンで汗だくになっても構わない。マット運動とか平均台での競技、縄跳びなども得意だった。水泳で身体を伸び伸び動かすのも気持ちが良い。体力測定も、走るのと投げること以外は目を覆うような成績はなかった。筋力もそこそこにあった。敏捷性も大丈夫。そう言えば、小学生の頃は、登り棒、鉄棒、うんていなども得意だった。
 だーけーどー!
 ……走るのは好きじゃない。
 夫が走り始めた時も、夫の健康に良いからと勧めておいて、自分は走らない、という自信があった。何故なら私は走るのが嫌いだから。
 なのに、ウオーキングじゃ飽き足らず、時々数十メートル〜百メートル、走るのを取り入れ始めた。その距離が少しずつ少しずつ伸びてきている。何故でしょう?
 ああ、まさか自分が、走ることをこんな風に書くと思わなかった。
 「楽しいから」。「気持ちが良いから」。
 そして、合計五百メートルも走ったかどうかって日から、すぐ私は、以前の夫と同じ事を言い始めた。「くるぶしのこの辺が痛い」「腰痛い」「膝が痛い」。こういったことは、身体に堅いところがあって、柔らかい所がその犠牲になっていると言う。自分で色々知識を身につけた夫のお陰で、それは太もものどこの筋肉をもみほぐすと良いとか、そこが痛いのは、ここ辺りが張っているんだよとか教えてもらえる。私は恵まれているなあ。
 いや、夫がね、気がついたら私を走るように仕向けてもいるんですよ。格好とか、靴とか、i-podとかイヤホンとか。走る人向けの物を買い揃えてくれるのだ。ちなみに私、夫にお洒落な物や花など、そんな贅沢に色々プレゼントされてませんよ。でも、こういったことは簡単にプレゼントしてくれちゃうのだ。時にはそのお金を……と思うこともあるのだが、結局はありがたく使わせていただいている身なのだ。ハァ〜ありがたや〜。