『発達とは矛盾をのりこえること』(白石正久著 全障研出版部)を読み、考えさせられることが多かった。少し読んでは、自分の中でかみくだいて、納得し、また読み進めた。
 私は専門家でもなければ、白石さんて方をこれっぽっちも知らないが、相当達観している方のように思える。こんなに多くの体験と、色々な考えを重ねて、いまだ発見することがあり、葛藤していること自体が、その人の大きさを物語っている。柔軟で、器が広い証拠だという気がする。子供のこと、人間のことは、こうである、という決め付けから時々外れるべきだという達観。
 彼の本に興味を持ったのは、障害のある人と接し、その成長を、健常者と重ね合わせている見方をしていることからだった。障害者のこの段階を、健常者では、何歳頃と当てはめる。障害を持っている人の中には、健常者より、何倍も何倍もゆっくりのペースで成長していく人がいる。その何倍たるや、読んでいて、本当に気が遠くなるほどだ。障害を持った親、そして寄り添う先生方の偉大さを、これを読んで知ることができた。そのゆったりとしたスピードに、ずっと寄り添っていくしかない親たち。しかし、その根気、葛藤、子供への目線、気持ち、には同じ親として尊敬の念すら覚える。「ゆっくり育てる」の意味が本当にわかっている人たちなのだろうと思わせられる。
 「ゆっくりで良いよ」と思っている私でさえ、早くこうできるようにならないかな、という気持ちが起こることが度々ある。でも、数ヶ月単位で、グングン成長し、できないことができるようになったり、精神状態が変わっていく子供を見て、やりがいを感じたり、そうか、こうやって少しずつ変わっていくんだなと感じたり。しかし、障害を持った人たちは、それが何年単位で行われる。一つ一つの成長を、じっくり喜ぶ気持ちの余裕を、いやでも持たなければいけなくなる。そしてそれは心からの喜びとなるようだ。
 これを読んでいると、自分が何てせかせかした器の小さい人間なんだろうと思わせられる。親だけではない。この著者、白石さんの気持ちが素晴らしい。
 こうやってみると、この子はこういう反応を示す。でも、ああやってみると、違ったという発見をして、あーそうなんだ、と自分を振り返る。その、上から見下ろしていない感じに、この人の優しさも感じる。そう、白石さんて、優しいんだなあと、この本にとても癒された。人の気持ちを本当に考えて、その気持ちに沿うことのできる人なのだろうという気がする。
 そのうち、このエッセーに載せるつもりのことだが、息子のどもりで、私の心がすさんでいた時。母親としての未熟さと、情けなさ、押し付けがましさに、自分を責めた。焦っては、また息子を追い詰めたようで問題行動が出て、自分をまた責めて。
 そんな時、読んだ文。次回、本の内容について書きますね。