息子が以前、手の甲に星を一つ、先生に書いてもらったと帰宅した。
 帰宅直後は嬉しそうに見せてくれていたが、夜になって「星一つだから、弱いって言われた。」と寂しそうに言う。そしてここから我が夫、つまり息子の父親との会話が交わされる。
夫「お父さんは、ミツ君が本当は強いことを知ってるから、弱いとは思わないよ。」
息子「そうだよねぇ(急に嬉しそうな顔をして、そわそわしている)。」
夫「ミツは、そう言われてどう思ったの?」
息子「いやだだと思った。」(「いやだと思う」ということを「いやだだと思う」と言う。)
夫「それでミツは何か言ったの?いやだとか言ったの?」
息子「ウン、ミツは本当は強いよって言ったけど、聞いてなかったみたい。」
夫「そうかそういうこともあるよね……。でも星が一つだからって弱いわけじゃないよ。星の数で、強い弱いが決まるわけじゃないよ。(夫は「ドラゴンボール」というアニメから皆が、星にこだわっていたのではないかと見当がついていたらしい。そのアニメでも星の数は関係ないということまで説明していた。)星の数が多いと強くなると思うかい?」
息子「ううん。」
夫「あとミツは優しいからね、優しいことを弱いと勘違いしている人もいる。でも優しいと弱いは別だよ。皆が何と言っても、お父さんはミツが強くて優しいことを知っているよ。」
 アラま!夫がこんな気の利いたことを言う人だったなんて!……というのは見くびりすぎか。夫と息子は、常日頃からきちんとコミュニケートしているからこそ、そう言っても説得力があるんだろうね。夫には、色々話し合うこともあれば、内心思うところもある。私の、子供との接し方に賛同してくれるものの、息子にとっては「怒るととても怖いお父さん」だ。でも息子は今の所、そんなお父さんが大好き。今回も、大好きなお父さんにそう言われたことが何より嬉しいようだ。とても良い表情になった。
 ちなみに「星たくさん書いた方が強いって?じゃあ先生にたくさん書いてもらったら?」という、雑で、気の利かない台詞を言ったのが、あろうことか私だ。心理学勉強してるってのは、本当かい?と、言った後で自分にツッコミを入れました。
 翌日、たくさん書いてもらった息子が「たくさん書いてもらったら強いって言われるかと思って書いてもらったんだ。」と手の甲を見せてくれたので、「それで何か言われた?」と聞いたら「ううん。何も言われなかった。」と言っていたので、思わずにっこりした。「お父さんの言っていたことは本当でしょう?先生に書いてもらった星の数なんかどうってことないんだよ。」星の数でからかった子も悔しくて無視するしかなかったに違いない。しかし、もし私が息子の立場だったら「星一つってことは、一番ていう意味なんだよおーだ!」とか、無理矢理こじつけて負けん気出していたことだろう。そういう屁理屈を幼い頃からよくこねていたのでした。負けるな、息子。しかし今は心の中でそっと応援するしかないですね。これから山のようにある弱い者いじめや、子供同士の小さいしょうもない下らない勝ち負けを、独自の作り出す知恵と力で、はねのけるんだぞ。
 そして、私はこんなことがある度に、奥田民生の『息子』の歌詞を思い出すのダ。