我が息子から見たら、運動神経抜群のA君だが、しかし、そのうちA君が、実は息子より繊細な子だとわかる。園内で、二人して先生にチョコッと注意されているところを見かけたのだが、息子は帰宅後、そのことに関しては平然としているのに対し、A君は翌朝「先生が怒った。幼稚園行くのいやだ。」と言ったらしい。
 A君の繊細さを感じさせるエピソードはたくさんある。靴箱で、朝のお別れがいやだと大泣きする息子。大体その頃を見計らったようにA君は靴箱に組み立てたブロックを持ってきて遊びに来た。そして私を見て少しニコニコしながら、そのブロックを見せてくれた。「カッコ良いね。」と言うと喜んで「バーン!」とかしてくる。しかし泣いている息子。あまりに泣き止まないと、A君は先生を呼んできてくれる。
 他には、息子が風邪で休むと、神社で「ミツ君の風邪が治りますように。」とお参りしてくれた。A君のお母さんからメールが入って「Aが‘ミツ君と遊びたい’と寂しがっている。」とあった。
 A君は実はシャイな子だった。息子が風邪で休んでいて、お見舞いに来てくれたこともあったが、最初の頃、お母さんの影に隠れるように立っていることが多かった。しかし、能天気な息子が風邪ながらもフザけると、A君は嬉しそうな顔をして近寄ってきて、うひゃうひゃ笑い出す。幼稚園で、フザケ方がエスカレートしていく様子が目に浮かぶようだった。
 A君は、「お別れ」に関して、とても感情を動かされる子で、以前ここのエッセーでも書いたことがあるが、成長していくセミの話を読んで、何時間も大泣きしたことがある。セミくんが大人になって土のウチから出ても、またウチに戻ってきてほしい、Aも、大人になってもウチに戻ってくるんだ!と泣いたそうだ。
 A君のおばあちゃんが遠くから遊びに来た時も、あまりものシャイな性格のために、なかなか打ち解けられず、やっと一日過ぎた頃におばあちゃんに慣れたものの、今度はバイバイの時間で、お別れする駅のホームで、A君はおばあちゃんより先に涙くんでしまったらしい。
 A君は、息子にできないことがまだまだ多かった頃、ボタン付けを手伝ってくれたり、まだオムツ取れかけの頃でもトイレに一緒に行ってくれたり、色々世話を焼いてくれた。信号機が大好きなA君と当時新幹線が大好きだった息子は、戦隊モノ好きな子供たちと多少の距離があり、そこでも気が合ったようだ。
 A君は弟にも優しい。もちろんケンカもするし、殴ったり蹴ったりも男同士の兄弟だからなかなか激しいものがある。でも、基本的に優しいのだ。自分がお兄さんであることをよく自覚している。A君のお母さんも「お兄ちゃんでしょ。」という無理強いは、私の目から見ると少ない方だと思う。それでも弟のために我慢してやらなくちゃと自覚していることも多かったように感じた。