息子の幼稚園で、踊りや歌などの発表会が毎年ある。いわゆる「お遊戯」の発表会は、1学期中にあるのだが、2学期のそれは、劇である。年長さんになると、その土地の歴史に基づいた話を演じることになるが、年中さんや年少さんは、その年によって色々だ。
 息子は、風邪をひきやすい。気管支炎にはしょっちゅうなっているし、流行の風邪は間違いなくもらい、腸も弱い。鼻も悪くて、副鼻腔炎と喘息の気があると言われていて、風邪になると、併発して、大変そうだ。その割には寝ないので、治りも遅い。
 年少さんの頃、一学期は休んだ日の方が、出席した日より断然多かった。二学期は、半々位だったかなあ。劇の発表会も楽しみにしていたのに、お休みすることになってしまった。
 そして今年、年中さんの中の2クラスは「ねずみの嫁入り」をすることになり、風邪をひきつつ何とか参加できた。
 それにしても、相当踊りが楽しいようで、運動会の前後も、ウチの中で何度も踊っていた。当日は、皆から少し離れたところで一人、目立って踊り「ボク、全部覚えていたから、一人で踊ったんだ!」とご満悦だった(笑)。歌いながら踊るという行為がとても好きらしい。
 「ねずみの嫁入り」の歌や踊りも気に入ったようだ。役柄は、女のねずみ、男のねずみ、おひさま、雲、風、壁、がいると言う。最初の週は、自分の好きな役を日替わりでやってみて、次の週にやってみたい役を自分で決める。月曜は男のねずみ、火曜はおひさま、水曜は何と女のねずみ、木曜は雲、金曜は風、と順番に色々体験してみたらしく、毎日ご機嫌で帰ってきた。そして翌週の月曜。息子は壁を選んでしまった。
 先生も「あれっ?!ミツ君、壁で良いの?」と聞いたそうだが、満面の笑みで「良いの。」と言ったらしく、帰宅後も「一番に壁になったんだよ!」って。……。それは他になりたい人がいなかったことでは……。しかもじゃんけんで二回負けて泣きながら壁になったお友達がいると言う。本当にそれで良かったのか?!と思いつつ、毎日見ていると、たくさんの歌や踊りを披露してくれる。楽しいらしい。が、壁の役だけは見せてくれない。当日のお楽しみなんだな。しかし、それにしても可笑しな歌詞がいくつかある。
 中でも「びっくりチュ。だっくりチュ。好き好き大好き〜。」は、聞いたことのない私でも、絶対に違うと断定できた。「だっくり」って何スか?……先生に聞いてみると、そこは「ドッキリ」だった。しかし、息子はとても可愛く(歌い方や振り付けが必然的に可愛くなっている。だって、そこは‘女のねずみ’のパートだからねぇ。)「だっくりチュ。」と言い続けているので、そっとしてやることにした(笑)。
 発表会前日には、全部のパート(やはり壁はしてくれない)を順番に一通り見せてくれた。がしかし、そこでも「そろそろ、私も落し物〜。」とハッキリ歌った。思わず「落とし物?!」とオウム返しに言ってしまい、一瞬何のことかと頭をめぐらせたが、そうだよな、この物語と文脈だと「お年頃」というのが正解だろう。幸い、息子は自分の詩と踊りに夢中で、私のオウム返しには気づかなかった様子。
 これを楽しげに歌われると、こちらまで楽しいのだ。
 しかし見たところ、雲さんが一番息子のなりたかった役柄のようだ。素直になれば良いのにさ〜。