前回の「人と比べてしまう」ことについての続きだ。
 わが子を育てている時に、つくづく自分は駄目な母親だと落ち込むことが多々ある。子供はこんなに父親、母親を欲しているのに、自分は応えきれない。自分の思うような反応を自分で示せない。自分は精一杯やっていないのではないか。周りはあんなに頑張っているではないか。自信がなくなって、激しい自己嫌悪に陥っている時に、ある文に出会った。
 唯川恵という人の文だ。
 彼女の文と初めて出会ったのは随分前のこと。恋に戸惑い、翻弄され、うまくいかなかった時に、彼女の「こうよね?こうでしょ?わかるわよ〜!」と訴えかけてくるエッセーに共感し、安心し、何度も読み返した。
 まあそのうち、そんな感情にも慣れてきて、必要ではなくなってしまったし、彼女の細やかな描写や伝わってくる感情が、ちょっぴり負担となって読まなくなった。
 そんな彼女の文を、美容院で手にした雑誌の片隅に見つけた。
 「人と比べてもしょうがない。自分は‘選んでそうしなかったのだ’と思えませんか。」
 というような内容だったと思う。
 なるほど。そうか。確かにそう思えば気が楽だ。できなかったからしないと思うより、選んでそうしなかった。フム。しかも実際そうだとも言えるのだ。まったく同じことなのに、ちょっと考え方を変えるだけで、否定的な気持ちから肯定的な気持ちへと切り替わる。
 他の母親が一生懸命やっているのを見て「私にはできない」という思いに支配され、落ち着かなくなることがある。あんなに立派に頑張っているのに。私は怠けているのだろうか。しかし「自らこのやり方を選んだのだ」。自分や子供の体質、性格、性質から、「そうすることにした」のだ。
 私の気持ちを助けた母の一言を付け加えておこう。
 私が子供の頃からも、母と私はすぐ風邪をひいては寝込んでいた。外で遊びたいと恨めしく外を眺める私を見て、母はこういう風に思うことにしていたと言う。
 「こういう運命であること、こうやって日々過ごすことも、きっとこの子の身になるだろう。何かがこの子のプラスになって、この子がここでこうしていることがこの子を成長させているのだろう。」
 結局大人になった私もやっぱり風邪をひきやすく、そのために子供に満足な思いをさせてやれないこともある。子供もまた風邪をひきやすく、ストレスを抱えていることもある。でも、きっと理想的ではなくてもこの現実の生活が、子供を成長させているのだろう。何らかの気持ちが彼の心の中で起こり、それは身となっていくだろう。
 それを信じて、私たちは私たちの暮らし方を選ぶことにする。
 そして、子育てに迷っているお母さん方に、自信を持ってほしいです。
 さらに、助けられたと思う夫からの一言も。
 「世界でたった一つの育児法だって良いじゃないか。自分がそれで別に良いんだと信じているならば。」