4歳後半の頃にさしかかる頃、息子はやっと「書くこと、描くこと、が面白い」と思ってくれたようだ。文字に興味はあって、何でも読むことが達者だったので、周りのお母さん方にも「随分と文字が書けて、絵も描ける」と思われていたようで、「え〜っ、そんなことないよ〜!全然書けないんだよ。」とこちらが驚いて返答すると、返って驚かれた。それくらい読むことと書くことがアンバランスだったのだ。まあそのうち興味持って書けるようになるさ、と思いつつ、いつなのかなあという期待感のようなものはあった。それがやっと簡単な字だけ書けるようになり、絵も少し前より形になっていっている。もちろん当人にもその自覚があるらしく、「お母さん、手紙を書いて渡すから、お母さんも書くんだよ。」と渡し合いを楽しむようになった。そして度々、奇妙な(失礼。素敵な??)絵を渡される。
 ある日、「お母さん、今日は紙芝居描くからね。」と言って、せっせと小さい紙に次から次へと何やら書いている。下唇をかんで何かに取り組んでいる時は、夫に似た真剣な時の癖だ。一生懸命なんだな……と思い、横で静かに待っていた。
 そういえば、絵本にもようやく本格的に興味を持ち出していたし、遊んでいる時に、自分でブツブツお話を構成していることもある。どんな楽しい絵で、どんなストーリーなのかな、数枚でも単純でも良い、もちろんオチなど期待していない。さぞかし可愛くて楽しかろう〜とか多少は期待に胸を膨らませたりして。
 そして「出来たよ!聞いててね。」と言って、見せてくれたのが。

子「一枚目〜。‘う’!……あっ間違えた。‘つ’!。」
私「……。ああ……。」
子「次ね、‘う’!」
私「……。あぁ……ホントだ。‘う’ってちゃんと書いてるね。」
子「三枚目〜。‘1’!」
私「……。あれっ。横にある‘0’は?‘10’に見えるねぇ。」
子「えへへ〜。でも‘1’なんだよ〜。」
私「……。あはは。」
子「最後は、‘ジョーカー’(トランプの)だよ!」
私「……。へぇ、そのグシャグシャッとなったところがジョーカーなの?」
子「そうだよ!」
私「あはは〜。ありがとう〜。面白かったわ〜。……。」
 これが私の精一杯の返事でした。一枚目が‘う’だろうと‘つ’だろうとどっちだって良いよ。‘10’に見えるのが実は‘1’だって、それがどうしたんだよ。……というツッコミは心の中にしまっておきました。