夫がいない時に、息子がトイレ行きたいと言うと、念の為に女子トイレについて来させる。まだ4歳。年齢的には大丈夫でしょう。でも、一人でトイレに行かせるのは心配だ。男子トイレは個室じゃないし、今時どんなヤツがいるかわからないぞ。
 ところが、女子トイレに来ると、便座の横に色々な機能が付いていますよねぇ。その中に、用を足している音を聞かれるのがいやだという人用に、音符マークがあります。それを押すと、トイレの水が流れる音がするわけです。男性諸君に馴染みがあるのかどうかわからないので、念のために説明しておきます。
 何故か日本女性は、用を足す音を聞かれることに抵抗があります。私は以前、映画で、そういうシーンがあって、ナヌ?!そんなこと気にするなんて意識過剰だ、変なの!と思った記憶がある。しかし、やはりどうにもそのシーンが頭から離れなくなってしまい、気にせずにはいられなくなった時期があった。当時は、トイレの水を流してその音を消していた。ところが、そういう‘音を気にする人’というのが日本全国やたらにいたらしく、問題になったことがあった。水がもったいない!環境問題に関わる!ということになり、そうだな、意識を変えなくては……と思い始めた頃、この「音消し」機能が出てきた。そしてどこの女子トイレでも重宝されるようになったのだ。
 初めてそれを見た時「おぉ!水の無駄遣いをしない、素晴らしい対策だ!」と大袈裟にも感激したものだった。
 で、息子はある日、トイレのその音符マークに気づき、「あの音符、今度押してみたい。どんな曲か聴いてみたいんだー。」と言う。音符のマークだから、曲でも流れると思ったんでしょうね。「良いよ〜。」と笑っていると、次に私とトイレ行った時にしっかりと覚えていて、「押して良い?押すよ?」と押してみていた。
 しかし!
 そこから聞こえてきたのは、素敵な曲なんかではなく、「ゴー!!」という流水音。びっくりした息子は、しばらく絶句。何とかその音の意味を自分なりに探り、楽しい発想に持っていくべく努力をし、一言。
「電車の音がするんだね!」