息子が「大きくなったら、お母さんと結婚する」という話を書いたのは、実は何ヶ月も前(この文を発表するのも、今書いているより随分後になると思うが)のことだが、いやあ、とうとうまともに断っちゃいましたよ〜。
 あれから折にふれ、息子は「大きくなったら、お母さんと結婚するんだ〜。」と言い、周りにも微笑まれていた。放っておいても、そのうち気づくなり、からかわれるなりして、路線変更を余儀なくされるのだ。そうでなくても、自然に好きな子というのができるだろうしさ。と思っていた。
 ところが、あまりに頻繁に言うし、しつこいなあと思った私は「そうお?でもさあ、お母さん、二人の人とは結婚できないんだよねぇ〜。」としみじみ言ってしまった。そうしたら、息子は考える顔をして黙ってしまった。
 「ナンだって?二人と結婚できない?結婚て一人だけなの?お母さんはお父さんと結婚しているから、僕とはできないの?結婚て、好きな人と一緒に暮らすことじゃないの?」……まあおそらく彼の頭の中はこんな感じだったんでしょうね。
 息子のいない方は、父親のことを考えてみて下さい。男兄弟がいる方にもわかっていただけると思いますが、息子は母親にとって、それより可愛いし、子供だから‘母子’という関係である以上、特別な気持ちはもちろんあるものの、まあ所詮家族。結局は自分にとっての父親や、兄弟と似たようなもん。どんなに大好きでも恋愛感情は湧かない。結婚できないのは、制度以前に感情的に家族だから。としか言いようがない。そんなものを4歳の息子にどう説明しましょう?!
 黙っていた息子の表情は、一時的に険しくなった。しかしすぐに、「よくわからないから、お母さんの言っていることは流そう。」といった風な態度になった。
 あっ、今、流したな!……と思った瞬間が見てとれた(笑)
 さらにその数日後、息子があんまり可愛いことをしたんで、ほっぺたにチュッとしてやった。そうしたら、息子が私の両ほっぺたをぎゅっと挟んで口にブチューッとし返してきた。そして「うおっ!」と驚いた私が爆笑しながら顔を離すと「もっといっぱいするんだよお!」とか言い出したのだ。それを聞いて「いっぱいチュウしたければ、結婚相手にしてもらいなよ。」と言って断った。すると息子は、キョトンとした顔で「相手って何?」と言う。「結婚する人といっぱいチュウしな。」と言い直すと、またほんの少し思いつめた顔になった(笑)。
 「結婚する人?お母さんじゃないのか?そう言えばこの前もお母さんは僕と結婚できないと言っていたな。」ま、彼の頭の中は、またこんな感じだろう。
 その後何日もしてから「結婚ていつからいつまでなの?」と聞いてみたりして、お父さんとお母さんは結婚していてそれがずっと続いていると気づき、自分はそこに割って入って結婚することはできないらしいと、ようやく気づき始めているようだ。
 いやあしかし、人のプロポーズを断るなんて、後にも先にも初めてだわ。貴重な経験をどうもありがとうねぇ〜。