『男の子の脳、女の子の脳』(レナード・サックス著  谷川漣 訳 草思社)から、さらに耳の話。
 本によると、「新生児350人を調査した結果、女の子の聴覚は男の子よりはるかにすぐれていて、とりわけ話し言葉の識別にごく重要な1000〜4000ヘルツの範囲の音には敏感であることを発見した」との記述だ。
 こういったことからわかるのは、女の子の方が、お母さんの話していることに敏感だということらしい。お母さんの声はよく聞こえるが、お父さんの声は、聞こえすぎてしまうので、少し強い調子で話すと怒鳴っているように聞こえるらしい。
 男の子からするとどうだろう?お父さんの話していることはよく聞こえる。しかし、お母さんの言っていることは聞き取りにくい。男の子を持つお母さん、「息子が話を聞いてない」という不満、身に覚えがない人は多分「いない」と言って過言ではないでしょう。こちらが注意しても、耳に入らない様子で自分のしていることを続ける。何回言っても生返事でまた同じことをする。あれは無視しているわけではなく、何やらお母さんが注意しているなあ、程度にしか聞こえていないことも多いらしいですよ。だから、ため息ついてイライラせず「あー聞こえてないのね。」と何度でもあきらめずに言い続けましょうね。
 さらに、興味深い内容が書いてあった。「音楽療法が未熟児におよぼす研究結果、ソフトな音楽を流せば、赤ちゃんの食欲が増し、成育が早まる。音楽療法を受けた女の赤ちゃんは、そうではない女の赤ちゃんより平均で9.5日早く退院していた。だが、男の赤ちゃんは音楽療法を受けた子もそうでない子も退院する日が変わらなかった。」ということだ。どうですか。赤ちゃんに音楽を聴かせたら心の生育がどうだとか、クラシックがどうだとか、よく聞くでしょ。しかし男の子には何ら役には立たないということがこれでわかる。もちろん、未熟児に対する成育についてはもっと研究がなされるべきだろう。未熟児の男の赤ちゃんには何が効果的なのか、親にとっては切実な問題だ。
 それにしても、問題は単純ではない。これが良いらしい、じゃあすべての赤ちゃんに当てはまる、ではないのだ。なのでマニュアルは怖い。この通り、こう書いてあるから、これが良いらしいなど。その通りしていたら間違いがない、なんてものはないのだ。そんなものは一人一人の親が、個人個人の赤ちゃんや子供の反応を探りながら、一生懸命親と子とで見つけていくものですよね。
 子供の成長を見ながら、人と比べて動揺する母親は多いだろう。しかし焦ることはない。子供の成長にまかせよう。我が子は我が子なりの成長のペースで、様々なことを吸収し、得ていく。そして、ある程度の年齢になれば、ある程度のことはある程度に横並びなのだ。それをよく知り、子供の感性にまかせてのんびり構えていけば良い。(とか自分に言い聞かせてみたりして。)
 子供とよく向き合って、どんな気持ちを抱いているのか様子を見て、気持ちをぶつけあって、ケンカして、言い合って、いっぱい仲直りして、しっかりとした信頼関係を作っていったら良い。単純なんですよ。でもその作業が大変なんですよね〜。