息子は、怖がりである。単純にそう言って良いのかどうかわからないが、怖がりか怖がりじゃないかと聞かれたら、怖がりの部類だ。そんな私も怖がりだが、息子の怖がりは、小さい頃の自分を思い返してみても、それ以上だ。
 息子が怖がることは色々あるのだが、比較的最近の話をしよう。

 その日は高速道路で山を越えていた。山に近づくにつれ雨が強くなってきて、途中のサービスエリアで止まると、雷が鳴っていた。外の空気も上着がいるくらいの涼しさだ。そこへ建物の中に入ると、ガンガンに冷房が効き、寒い。
 しばらくその建物の中にいると、息子が前かがみになってお腹をおさえている。
 「寒いの?お腹痛いの?」と聞くと「ううん。」と言ってニヤニヤしている。すると、夫が「雷が鳴ってておへそが取られちゃうからだよね。」と。アラ、そうなの?と息子を見るとニヤニヤ。
 その後、車に乗り込む時も、おへそを押さえたまま、ニヤニヤ照れ笑いしながら、ひょこひょこ変な感じで走って行った。

 さらにある夜のこと。
 小さくなったティーシャツを、無理矢理着た夫を見て、私が「おとなになるっていうことは、服が小さくなるってこと!」と某絵本を基に考えた台詞を言った。そして息子に「父さん、お腹出てるよ、ホラ。」と言って笑った。……すると息子が夫のティーシャツを引っ張って、お腹を隠した。優しいのねと思ったら「雷さんに取られちゃうよ。」と真顔だ。
「……!!」息子よ、そんなに雷が怖いのかい?!
 そしてその後、「雷が怖い。」と真剣そのもので訴えてきた。おうちの中にいたら大丈夫だよ。車の中も大丈夫。と言ったのだが、怖さがよみがえったのか、歯磨きの口ゆすぎにもついてきてくれと言う。仕方がないので、口ゆすぎしている間にも「音がびっくりするよねぇ。でも音が大きいだけだよ。」とか気持ちを少しでもラクにするよう、声をかけていた。そして布団に戻ると「雷はどうして落ちるんだい?」「傘をさしているとどうなるんだい?」などと質問攻め。そして「雨が降っていて雷が鳴るとどうしたら良いの?」と聞いてきた。とりあえずは、そんな状況じゃなかったら、ということは置いといて「傘を閉じて、近くの建物の中に入れば良いんだよ。」と言うと「あー良かった。」と言って、大好きなピグレット(プーさんの中のキャラクター、コブタちゃん)を両手で握り締め、目をギュッとつぶり、あっという間に寝た。

 ……そうか。そんなに怖いのか。