その数日前から、息子の帰宅後のからみ方が、しつこかった。私が怒鳴らなければならないことも多く、私の方もそれがストレスになっていた。何で最近、いつも以上にグズグズ言うんだろう。体調悪いのかな。
 そしてその日、「母さんとお風呂入りたい。」と言い出した。いつもお父さんとのお風呂を楽しみにしているのに、入る直前になって突然だ。母さんと入るなら、じゃあ今すぐ入ろうと言うと、いつもより1時間遅く入りたいと言う。それじゃあ寝る時間じゃないの、今だよ。などとさんざん言い合って、結局お父さんと入るのだが、入ってからずっと「母さんと入りたかった」と泣き喚く。まあ真意がそこにないことは夫婦共々わかってはいた。が。息子があまりに「母さんと入りたかった!!」と号泣するものだから、夫も怒ってしまい、風呂から息子を出した。息子は「これから体洗うところだったのに!」と今度はそれで泣いている。「父さんが何で怒ったかわかってる?」と聞いてみると、案の定「わからない。」と泣いている。いつもなんですね。怒られている理由が、子供にはよくわからない。怒られたこと自体が悲しくなっちゃって、もうその原因とかわからなくなっちゃうんだよね。わかるけどね。でもそこで、「‘母さんとが良かった’ってお父さんが言われ続けたらいやな気持ちがするでしょう?ミツだって、A君(大好きなお友達)に、‘ミツくんいやだ!ほかの子が良い!’って言われたら嫌な気持ちがするでしょう?」と言ったところ。
 「A君が、ミツのこと嫌いって言った!!」とさらに声高らかに号泣しだしたのだ。
 どうやら本当のことらしいとわかった私は、「おいで」と膝の上に乗せて、抱きしめた。「そりゃ辛かったね。悲しかったかい?」と聞くと、ウエウエ泣いて、顔をグシグシと私の胸にこすりつけている。
 ま、仲良しでしっかり者のA君が怒って、許さない、嫌い!と言うってことは、それ相応のことを息子がA君にしでかしたわけだな。A君の心が落ち着くまで、息子は許してもらえんだろう。自分のしたことなんか覚えちゃいない能天気な息子のことだから、許してもらうまでに時間もかかるかもねぇ。まあ、気長に待つことだな。と思いつつ、やはり気にはなる。
 息子は、A君がお休みした日でも、なかなか気づかないくらい、幼稚園に行ったらその場の空気で、わーっと舞い上がって他のお友達とも遊んで楽しんでいるらしい。近所でも友達はいて、度々遊んでいる。言い合いになっても、その時楽しければと適当に遊んでいる。
 なのに「ミツのお友達はA君だけなんだよ。今は、幼稚園でA君とは遊ばないから、お友達いなくて寂しいんだ。」と言う。なんだそりゃ。その台詞だけ聞くと、誤解されるぞ。幼稚園に行くと、いつもたった一人ぽっちで、とても寂しい。という風に聞こえるじゃないか。そりゃお友達の概念を間違っておる。と思ったので「一緒に遊べたら、それも皆お友達なんだよ。」と言うが、そうすると「じゃあ大好きなお友達はA君だけ。」と言う。
 その後、先生に聞いてみると、楽器の好きな我が息子は、楽器で遊ぶお友達とキャッキャと楽しんでいるらしく、時々A君と近くになると喋ったり、トイレ行ったり、と声を掛け合っているそうだ。なんだよ、それで充分じゃないかー!