子育てをしていて、あー自分もこうだったかなあと振り返ったり、自分の時はどうだったかと母に聞いたりすることが多々ある。
 少し前のことになるが、息子がお友達のA君とケンカらしきものをして帰ってきた。

 幼稚園から帰宅すると、心身ともに疲れ果てるのか、いつも彼は不機嫌だ。とにかくうっとうしい。階下のポストから手紙を取って息子に渡し、階段を上がる。という作業だけで、細かい注文をつけ、その通りにしないと、泣いてゴネる。もちろん息子の真意はそこにない。ただ疲れたので、泣いて気持ちを発散させたいだけなのだ。だから、どういう渡し方をしろだの、自分の後を歩けだの、ピンポン鳴らしてから鍵を開けてだの、まだ鍵開けないでだの、抱っこしてだの、そんな抱っこはいやだの、そういった言葉の表面に捉われて、いちいちイライラして怒ったりしても、意味はないのだ。意味はないのだ!とわかっていても、どうしてもイライラする。泣きながら大声で怒るものだから、こちらも声のトーンが上がってくるし、仏頂面にもなる。玄関に入った頃には、堪忍袋の緒が切れて、怒鳴る。余計泣く。あ〜腹が立つ!イライラ!先に靴脱いで行かないでだの、鞄持ってだの、持って行かないで自分で持って行きたいだの、手を洗いたくないだの、一緒に手を洗おうだの、おやつ食べたくないだの、疲れて歩けないだの、まーよくそんだけ思いつくなあという言葉を散々投げかけて号泣するから、こっちはプンプンお腹の中がまさに煮えくり返るほどに熱くなり、頭からは蒸気が出ているんじゃないかと思うほどカーッとする。
 そしてギャンギャン泣いて怒らせた後に「まみだ(涙)拭いて〜。」とくる。「こんな気分で涙なんか拭けないよ。涙くらい自分で拭くんだよ!」とか言いながら、思わずひっぱたきそうになる手をグッとこらえて、涙を少々乱暴に拭う。最近は自分で洗面所に行き、顔を洗ったり、ティッシュで拭いたりしている。
 あまりにひどいと、「グズグズ言ってごめんなさい。」と謝ってくる。こちらも「怒り過ぎたね、ごめんね。」と手を広げると、腕の中に飛び込んでくる。そして「仲直り。」と息子は自分で言っている。(仲直りしたい、したくないで言い合ったこともあるけどね 笑)
 やっと一息つくと、もうすっかりご機嫌だ。こっちがついていけないってくらい、普通に喋ってきて、引きずっているのもバカバカしくなる。
 この一連のことが、息子にとって儀式化しているのか、ほぼ毎日繰り広げられる。親にとっては、これほど面倒なことはない。でも、いつも落ち着いた後に、あー今日もいやなことあったのかな、発散できたかなとホッとするのも確かだ。
 大人は、ストレスがたまると、体を動かしたり、自分の趣味や好きなことに没頭したり、ふて寝したりと、何とかすることができる。自分がどうしたらストレスが抜けるのか、ある程度知っている。しかし、子供はどうしたら良いのか自分ではわからない。いやなことがあった時、乳幼児はやはり泣くことが一番の発散方法らしいのだ。だから、仕方ない。
 幼稚園で辛いことだって不安なことだって寂しいことだって、色々あるよね。そういったことを踏まえて、今回の出来事だ。