『男の子の脳、女の子の脳』(レナード・サックス著  谷川漣 訳 草思社)を読んで、‘目からウロコ’だったことがたくさんあった。
 それまでに、夫婦のことで考えるところがあり、大人の男女に関して、考え方の違いを読んだことはあった。例えば男の人は一つのことに集中しやすく、「ながら」の作業が苦手であるということ。それはつまり、テレビを観ている時、運転をしている時、女性の話を聴けないということで思い当たる奥さんもいるのではないだろうか?他に、その時の状況から、あれやってほしいなあ、これに気づいてるだろうから手伝ってほしいなあと思っていることを、男性は気がつかないと言う。なので、明確に言葉に出して指示すると良いそうだ。察してよ、そんなこと恥ずかしいやら情けないやらで口には出せないと思っている女性方、一生平行線ですぞ。平行線どころか、腹も立ってくるだろう。でもそういった仕組みを理解していると、男性側に近づくことができる。
 男性側にしたら、急に怒り出したように見える女性のことも理解できないでいる。しかし、女性の側から考えると、それまでに積もっているものがあっての怒りなのだ。黙っている間というのが色々なことで怒っている期間である。なので、女性が黙ってしまったら相当怒っていると思った方が良い。それをようやく口に出した頃には怒りが大爆発するまでたまっていたか、もうそれを通り越して冷め始めている時だ。気をつけよう!
 また、例えば女性は、男性に、感じたことを口に出してほしいと思っている。自分の外見(服装や髪型、その他)が変化したこと、自分たちの関係改善やお互いのために一生懸命努力したことを誉めたりねぎらってほしいのだ。男性にしたらそんなのわかっていることだろう、恥ずかしいことだと思うかもしれない。しかし!これまた実行しないと平行線だ。気が付いた時には彼女の心はすっかり冷え切っているかもしれない。
 そしてガス抜きの仕方も圧倒的に違いがある。男性はストレスがたまると、一人になりたくなる。女性にしてみれば、分の想う男性が、愚痴を言ってくれないと、不安に思うかもしれない。しかし、男性は自分の中で落ち着かせる時間が必要らしい。そして落ち着くと「一人の時間をくれてありがとう」とまた近寄ってくるとのこと。女性はその逆で人に喋りたくなる。女性が愚痴を言うと、男性は、ついアドバイスしなくては、と焦るのだが、女性は決してそれを望んではいない。ただ聞いてほしいだけなのだ。そして大変だったね、とか共感してほしいだけだ。
 もっともっと色々あるが、こういったことについて、書いてある本は多く、その内容は、国籍を超えて共感できることが多い。また、自分たちの会話を例に出されたようで、笑いながら、うなずきながら読む。
 しかし、子供たちについての本は、あまり具体的ではないものが多かった。著者の個人的見解によるものが多く、もっと何かハッキリと実証されている事実はないのだろうか。専門家が書いたものでも、それぞれの意見や考え方が書いていあるだけでは、押し付けを感じたり、憶測や推測に過ぎなかったり、説得力がないのだ。
 そこへ、今回の本だ。
 これは、様々に実験をしてみたり、15年に及んで多くの親子に接してきた成果、そして脳、神経、霊長類、新生児、小児科、それぞれの研究者の協力の下、得たデータである。