『ぼのぼの』というマンガがあります。
いがらしみきおという漫画家が書いているのだが、「ぼのぼの」という名前のラッコが主人公だ。お友達に、「シマリス君」や「アライグマ君」がいる。
 夫が、結婚する前から持っているマンガで、私もそれを読んでとても気に入っている。のんびりポカポカ日向ぼっこでもしているような気分にさせられたかと思うと、結構哲学的だったりして、考えさせられる。
 それを4歳の息子が面白半分に開けて見ることがある。ちなみに、絵本もある。絵本の方は、マンガよりも、ちゃんとわかりやすいお話になっていて、味わい深かったり、可愛かったり、子供向けでありながら、考えさせられることもある。息子の絵本の好みは偏っているところもあるが、その絵本は割合好きらしく、何度も読んでいる。
 それがある日、マンガの方を読んでいる息子が「シマリス君て飛べるんだよ。」と言う。
 えっ?シマリス君て、飛べたっけ?飛びたいという夢があるのは知ってるけど、結局は飛べないんじゃなかったっけ?……疑問に思いつつ「へぇ、そうなの?」と返事すると「ホラ見て。」とマンガを持ってきた。
 見てみると、アライグマ君がシマリス君をいじめ倒し、それで、可哀相にシマリス君が、蹴られて飛んでいってしまう場面だった。アライグマ君は、ちょっと気の毒な、色々な背景があり、そのために乱暴者で、いつもシマリス君をいじめている。絵本の方にはそんな乱暴なシーンはないのだが、マンガは一応大人向けなので、そんな場面も容赦ない。
 「ここも。……ホラ、ここもだよ。シマリス君、飛んでるね。」
 「……。」
 ああ、これがいじめられていると息子が知ったら……。乱暴にも蹴られて飛んでいってしまっているなんて知ったら……。そう思うと
 「ホントだねぇ。」
 と遠い目をして言うのが精一杯だった。そういうことは自分で気づいていってね。ミツやミツ。これからの人生、知ること、知らなきゃいけないこと、妥協や現実、まだまだ色々いっぱいあるねぇ。