半年以上前のことになるが、子供が、夫の仕事について、この程度の認識かと思い知らされたことがあった。子供が興味を持って聞いてくるまでは、夫の仕事の話をあえて話すこともないかと、特に話題にも出していないのだが、そのせいなのか、面白いことを言っていた。
 夫のことを「パパ」、私のことを「ママ」と呼んでいた時期のことだ。
 「‘パパのお仕事ごっこ’しよう。」と誘ってきた息子。リュックを背負って通勤する夫のことを見ている息子は、クッションを背中に当てて「ママもクッションおんぶして。」と言う。
 そして、和室の手前で「ここパパのお仕事する建物のドアね。」ともっともらしく止まって入り、「は〜着いたねぇ。さあ、お弁当食べようか。」と‘ごっこ’の世界に入っている息子は、早速食べ物のことだ。
 私が「えっ?!もう食べるの?」と驚いて笑っていると、息子は「ウン、何で?」と、とても不思議そうな表情でこちらを見ている。
 「いや、良いんだよ……早いんだね(笑)じゃあお弁当食べようか。」と言うと、「ウン、ここから出して。」とリュックのつもりのクッションからお弁当を出すフリをし、さらに一通り食べたフリをした後「ミツ、アスパラビスケット持ってきたんだー。ママにもあげるね。」と言って、二本くれた。
 そして満面の笑みで「二本ずつだね〜!」と言う。当時、○△ずつ、という言い方を覚えたところだった。食べたフリをした後また「食べたから……一、二……ハイ、また二本。ミツも二本」とブツブツ言いながら食べるフリをし「ミツ終わった!ごちそうさまでした。」と両手を合わす。
 「あーたくさん食べたね!ごちそうさまでしたー」と、こちらも合わせて言ってみたら
 「ママも終わった?」
 「ウン。美味しかったわ〜。もうお腹いっぱいよ〜。」
 と、一通り、会話し終わり、一瞬シンとなると、
 「じゃあ帰ろっか!」  
 ……。
 君は、お父さんがお弁当を食べるために仕事場に行っていると思っているんだね。そしてお父さんのリュックの中にはお弁当だけが入っていると思っているんだね。