よく「心理学の本」と書いているが、読んでいるのは、プロのカウンセラーや臨床心理学士などの専門家たちの書く本がほとんどである。
 専門家たちは、勉強による積み重ねと、もちろんそれだけでなく、出会ったクライエントとその家族たちとの多くの対話と、お互いを知る自信からくるもので、経験も欠かせないのだが、それをよく分かった上での、意見である。それは決してアドバイスではなく、押し付けがましくない。
 教育学の観点から書いてある子育て論の中には、一部だが、時々疲れてしまうものがある。もちろん、参考になる部分も多いし、読んでいて勉強になるし、何度読んでもなかなか頭に入らず、読むたびに新たな気持ちで「ヘェ!」と感心する。それだけ細やかで、子供たちの年齢毎に対応しなければならないことや、親が知っておくべき常識は多いのだろう。疲れてしまうというのは、彼らの著書の中には「親はこうすべきだ」「こうあらねばならない」という記述が度々出てくるということ。そうでない親は、至らない、親として不真面目、不勉強であるという押し付けを感じることがある。それは、親の自信をなくし、こうしなければいけないというプレッシャーを感じさせ、自分を追い詰めてしまい、イライラを増幅させることになる。また、教育もからんでいるので、著者それぞれ、こうすれば良い、という理論が異なり、混乱する。
 お母さん!私はお母さん方の味方だ!もっと気楽にいこうぜ〜イエ〜イ。
 だって、私だって至らないことだらけだ。
 心理学に関して言えば、もっと根本的な部分を見つめようという訴えだ。教育がしっかりしていても、心がついていっていなければ、その子供は不幸だと言えるだろう。親から見た「幸せ、不幸せ」ではなく、子供自身が感じ取るそれはどうなのか。
 こうすればこうなる、という子供が育つ理屈はあくまでも理屈であって、そうはならないことも多々ある。努力すれば結果がついてくる、という理屈さえそうだ。最初から頑張らないのは残念なことだが、頑張ってもどうにもならないこともある。親が「これが一番だ」と思うやり方で子育てをしても、子供にはどう映っているかはわからない。考え始めるとキリがない。こうしたら、こういう子供に育つという理屈はないのだ。
 しかし、こういう子供の親はこういうタイプが多い、という理屈が成り立つことは覚えておかなければいけない。自分がそうならないかどうかもわからない。
 たった一つ、多くの心理学を読んでわかっていることがある。ごくごく単純なことだ。  
 子供の心が健全に育つには、母親が生き生きとした日常を送っているべきだということ。
 お母さんが、仕事をしていようと、専業主婦だろうと、ダンナさんがいようと母子家庭だろうと、極端に言えば、何だって構わないのだ。子供を心から愛してそれを伝え、でも子供だけが生きがいになることなく、自分の人生を真剣に考えている母親であれば、子供は紆余曲折しながらも、心は健全に育っていくようだ。もし結婚しているのなら、ダンナさんと風通し良く会話でき、精神的に支えあえる関係が一番良いということです。
 至って単純でありながら、できない母親は案外多い。