息子は、歩くのがあまり好きではない。私もそうだったからとてもよくわかるが、とにかく抱っこが好き。だってラクなんだもん。ベッタリできるから安心だしさ〜。……というのが、4歳頃の佳澄ちゃんの気持ちだった。息子もそうなんだろう。赤ん坊の頃から、とにかく抱っこ抱っこで、外に出てもベビーカー乗る時間も限られていて、抱っこが良い、と泣く。歩けるようになっても、すぐ抱っこと手を伸ばす。
 しかしですな、今や服込みで19キロ近いんですよ。座って抱っこか寝て抱っこで許してよ〜。というわけで歩いている時は、腰痛いやら足痛いやら腕痛いやらで、夫がそばにいれば夫に頼むことにしている。そんな夫もそろそろ限界が来ているようだけど。
 その息子と、夫の職場に置いている車を取りにいくことになった。ずっと坂道続きで、大人の足で30分。ただ、息子は坂が好き。どんな小さな坂でも、急な坂でも、見つけると、走って上り、走って下り、下で待っている私に激突してくることもある。以前長い坂道を夫と3本ダッシュしてそれが終わると「疲れた。抱っこ。」と言いなすった。まあそのくらい坂が好きなのだ。
 夫の職場までは、急な坂道か、なだらかな坂道のどちらか。つまりずっと坂道だ。ウチからだと下り。一度だけ夫と息子とで駆け下りたことがあるので、私とも歩いてくれるかなと期待して、初めての息子との長めの散歩だ。歩くようになってから、そんなに長い距離を‘二人してただ歩く’ということをしたことがない。すぐ抱っことか、何か途中に目的がちょこちょこあって何度も途中で買い物したりしながらの歩きならしたことあるけど。
 で、息子は夫と歩いたことを覚えていて「僕の歩くようについて来てね。」と張り切っている。しかし、病み上がりだったせいもあってか、5分位したら「抱っこ」と来た。え〜歩いて抱っこはできないよ〜、と道端で休憩することを提案すると、もう少し頑張ると歩いてくれる。結局、計2回数十メートルをおんぶ、こけて泣いた時に数十メートル抱っこ、で後は歩いてくれた。
 その道中がとても楽しかった。二人で松ぼっくり蹴ったり、木を見上げたり。雪解け水がたくさん流れる溝を二人で眺めたり、休憩すると言って、以前夫と休んだらしい「黒い所」で休んだり。側道のようになっている、やはり坂道を駆け上がり、また下り。あぜ道に咲いている花を見たり、職場近くの歩道が柔らかく工夫されているのを二人で触ったり。堀のようになっている所に二人で枯葉を投げて、流れるのを見送ったり。
 小さな子と散歩するって、楽しいな〜と再確認させられた。
 意味のないようなお喋りをしながら、目の前にある出来事を色々口にして、共感しあう。
 そう言えば、たくさん歌も歌った。奥田民生の歌だったけどね。ハハ。息子は歌って歩きながら、踊っていたりして。何て楽しそうなんだろうとこちらが楽しさを分けてもらうような気持ちだ。
 夫が、息子と散歩する度に「ミツと散歩すると楽しいよ。ずっとお喋りしててくれるんだ。」と話してくれていたことがようやくわかった。
 子育てって、こんな大切な時間があったんだな。